装備=ライフル
This is my rifle. There are many like it, but this one is mine.
. My rifle is my best friend. It is my life. I must master it as I must master my life
これぞ我がライフル。世に多くの銃があれど、これは我、唯一のもの。
我がライフルこそ、我が親友。それは我が命。我は己の命を支配するようにそれを支配する。
有名な海兵隊ライフル信条で語られるように、海兵隊にとって、最も重要な武器は、ライフルであり、それを扱う海兵隊員です。
それ故に、海兵隊員は、全員が、「ライフルマン」であり、兵科の概念はなく、またいかに優秀であろうと射撃の腕が悪ければ海兵隊員にはなれません。
※ケネディ大統領暗殺犯オズワルドは、「射撃が下手だった」と言われ、暗殺犯否定論の一つにもなっていますが、彼は海兵隊員であり、当然ながら下手と証言する同僚たちの基準は通常より上です。レースカーが遅いと言っているようなもの(一般車と比べれば、それでも早いということです)。
独立戦争時に一般的だったのは、先込式のマスケットでした。弾薬は、火薬と共に紙で梱包され、発射には火打ち石を用いていました。
時代が、進むと雷管が発明されます。火薬皿の火薬に火打ち石で着火する不完全で、手間のかかる方法から、一気に安定性と射撃速度が向上します。
更に時代が進み、金属製薬莢の発明と共に、後装式となり、連射性能が飛躍的に向上した19世紀末に、アメリカ軍はクラックヨルゲンセンライフル(デンマーク)を採用します。
しかし、米西戦争でスペイン軍のモーゼルライフル(スパニッシュモーゼル)と比べて性能が劣ることが判明し、ここに新型ライフルの開発が始まり、1903年にスプリングフィールドライフルがM1903として採用され、海兵隊でも1908年にM1903を採用します。
第1次世界大戦が終わると、各国で自動小銃の開発が始まります。最初に採用したのはスイスのモンドラゴンライフルを採用したメキシコ軍でした。
1930年代にアメリカ軍次期主力ライフルの開発が始まり、自動小銃を選定することとされ、退役軍人ガランド少佐の開発した自動小銃がM1ライフルとして採用されます。海兵隊では、3年後の1941年に採用しますが、生産の遅れもあり、ガダルカナルで戦った第1海兵師団が手にしていたのは従来のM1903ライフルのままでした。
M1ライフルの配備遅れによって、海兵隊ではM1941ジョンソンライフルなどを独自に採用していましたが、信頼性に劣るため、M1ライフルの配備が進むと使われなくなっていきます。
その後、第2次世界大戦と北朝鮮の侵略で勃発した朝鮮戦争で、あるデータが示されました。
「兵士は、自分の持つM1ライフルが、M1918BARと比べて無力と感じており、ある戦闘においては誰一人射撃を行わなかった」
これと同時に、1950年半ば、NATO軍共通弾薬の開発が始まったことにより、新型小銃と新装備の開発が始まり、1957年、アメリカ軍は一気に装備を更新し、M14ライフルが採用されます(海兵隊は1961年採用)。
しかし、1965年にベトナムへの本格介入が始まると、M14の欠点が問題となり、陸軍はM16を採用。海兵隊でも、同様にM16を採用します。しかし、海兵隊は遠距離射撃の重要性を理解していたためにM16採用後もM14の使用を継続、現在でも制式装備としてリストに残されています。
一方でM16は、採用時の改悪によって欠陥品となり、政治問題にまで発展したことにより、67年に改良型のA1が採用されます。
大量に弾薬を消費することで海兵隊の理念を侵害すると言われる一方で、兵士たちにはM14と違って撃ちまくれるM16は好評でした。
しかし、耐久性のなさは致命的で、1980年代に軍における予算配算方法が変わったことにより、これまでとは違って予算が自由に使えるようになった海兵隊はM16A1の改良計画を始めます。
こうしてM16A1E1が開発され、M16A2として制式採用されます。
1990年代、やはり、海兵隊用としてM4カービンの予算がつき、海兵隊よりも陸軍で大量導入される中、同じフレームを用いたM16がA3/A4として採用されています。
M1903
M1903 全長:1072mm(A3は、1092mm) 重量:3500g(A3は、3630g) 口径:0.30in (30-06:7.62mmX63mm。初期は30-03。1906年に弾薬改訂) 装弾数:5発 |
クラック・ヨルゲンセンライフルは、優秀なライフルでしたが、米西戦争において、スペイン軍の持つスパニッシュモーゼルライフルは遙かに優れたライフルで、上陸したアメリカ軍は一方的に撃ちまくられる状況に陥りました。
これにより、新たに新規ライフルを採用する動きが起こります。当然、Gew98ライフルも候補に挙がりますが、国産ライフル採用へと傾きます。しかし、モーゼルライフルの優秀性は捨てがたく、スプリングフィールドが選んだのは、無断コピーでした。一応、ボルトの固定ラグがモーゼルの4個に対して、3個と一つ足り無かったのですが、あえなく見破られ、安価にすまそうとした意図とは裏腹に多額の賠償金とライセンス料を支払う羽目になり、更に時の大統領セオドア・ルーズベルト大統領から、「格好が悪い」と言われて銃剣のデザインを1905年に変更、弾薬も30-03から、30-06に変更されるなど、スタートからの数年は苦難が続いたライフルでしたが、中身はモーゼルですので機関部の信頼性には問題がありませんでした。
※ルーズベルト大統領、「私は、ラムロッド銃剣がかつて私が見たのと同様に貧しい発明に関するものである、と言わなければならない」とえらい言いようです。
海兵隊では、このライフルを1908年に採用し、1912年のニカラグアから実戦使用が開始され、1914年までに更新が完了します。
その後は、数々の戦闘を海兵隊と共に歩みますが、第2次世界大戦時には生産が中止されていました。しかし、イギリスへの納入などにより、レミントン社がエンフィールドライフルの生産を請け負う際、アメリカ軍が肩代わりし、M1903を製造させることとされたことから、1942年から再生産が始まります。このタイプはM1903A3とされました。
M1ライフルの不足……というか、1941年に採用したのにM1が海兵隊には回ってこなかったために主力ライフルとして使用され、1942年にガダルカナルに上陸した第1海兵師団が手にしていたのもM1903でした。
※そのため、ガダルカナルにおいては火力は日本軍の方が上のはずです。
第1次世界大戦後に、簡素化などの改良が行われ、A1,A2,A3と進化していきます。第2次世界大戦で(陸軍も含め)多数使用されたのはA3でした。というのは陸軍の話で、海兵隊は最初から最後までA1ですらない、M1903でした。
海兵隊では、火力不足を補うためか、M1918BARのマガジンを溶接するなどして使用していましたが、次第にM1ライフルと更新されていきます。
それでも、海兵隊においては、命中率は並ぶ物が無いとされ、射撃プログラムの基礎とされ、あのThe Creed of a United States Marine(海兵隊信条)もまたM1903に対する海兵隊の崇拝から来ています。
また、朝鮮戦争において、M1ライフルのガス機構が凍結して使えなくなったとされ、1947年に廃止されていたにもかかわらず、倉庫から引き出されて前線へ送られたそうです(伝説とも)。
M1903(KTW)提供:ヨハン
M1
M1 全長:1100mm 重量:4370g 口径:0.30in(30-06:7.62mmx63mm) 装弾数:8発 |
漢の銃ライフル編。同時に世界最強の自動小銃。更に兵士の両手を傷つけるべく設計されたライフル。
※考えているようで考えていない設計が素敵です。それを上手く扱えてこそ、漢なのかもしれません。
アメリカ軍は、次期制式ライフルを当時流行の自動小銃にすることとしてトライアルを開始し、最終的に、ピーターゼンライフルとガランドライフルの自動小銃が残ります。
ピーターゼンライフルは、スプリングフィールドライフルを自動化したものですが、口径がこれまでの.30in(7.62mm)から、0.286in(7.25mm)へ小口径化しており、携行弾数の増加及び連射性能の向上を図っていました。
一時期は、ピーターゼンが優勢でしたが、当時の兵器開発局長だったマッカーサー将軍は、
「異なる弾薬は補給状況を悪化させる」
と合理的な理由と「30口径は完璧である」という非合理的な理由により、既存の30-06弾を使用するライフルを要求。これにより、ガランドライフルがM1として採用されることになりました。
陸軍では1936年、海兵隊ではM1ライフルを採用しますが、生産が追いつかず、例によって陸軍が優先されたために配備が遅れ実際の支給は1942年末までずれこみ、ガダルカナルの後半戦になって、参加した第2海兵師団から用いられることになります。
その後は、主力小銃として第2次世界大戦と朝鮮戦争を戦いますが、セミオートであっても、装弾数8発でしかないために、朝鮮戦争における戦闘のデータで、ライフル兵が、
「自分たちは無力だ」
として一発も撃たず、分隊支援火器BARのような連射が可能な銃を求めていることが明らかになり、それを受けて開発されたM14の採用を持ってM1は制式ライフルの座を降りました。
現在、一部が儀仗用のライフルとして使用中です。
M1ライフル用銃剣
M1942(上)・M1(下) M1942は開戦から、ガダルカナルの頃まで用いられていましたが、長すぎるとして、後に回収され、擦り上げて刀身を短くしたM1として採用し直されます。 |
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露出したオペレーティングロッド。構え方を間違うと左手の指を傷つけます。
ボルトオープン。残弾0でクリップを排出すると後退して止まりますが、後退させたまま止める部品は無いためにクリップを装填するとボルトが前進し、うっかりすると親指を挟むことになります。 映画などの装填シーンでは、おそらくスプリングを外していると思われます。 |
M1ライフルで良く言われるのが、クリップを弾き出す構造のため、落ちたクリップの音で弾が無くなったことを敵に知らせ、反撃されるというものです。
朝鮮戦争の頃、凍り付いた地面に落ちた金属製のクリップの音を合図に中国軍と半島の付け根の土地に拠点がある武装集団が突撃を始めるとされたことが根拠ですが、実際には戦場は排出音が聞こえるほど静かではありませんし、そもそも一対一の決闘をやっている訳では無く、周囲には弾がまだある味方はいるでしょうし、機関銃や分隊支援火器がそういう突撃を阻止するために設置されてもいます。逆に中国軍と武装集団の突撃はチャルメラやドラを合図に行うために逆にそれでアメリカ軍は突撃を察知して反撃できた事実の方が多く、むしろ、そういう環境(−25℃)でまともに作動していた事実からすれば、確かにM1のクリップ給弾方式は途中給弾ができないなどの欠点はありましたが、その非難に関しては難癖に近い代物と言えるでしょう。
むしろ、8発クリップを装填するために大きく開くエジェクションポートから、泥、埃や雪などが入り込むことによる作動不良の方が問題であり、このため、イギリス軍の調査結果ではリー・エンフィールドには及ばないとされています。
※イギリス軍のテストというのは、要するにイギリスの兵器最高と言いたいだけなのですが。
M1ライフル(ハドソン)提供:鬼ピート
銃剣提供:ヨハン
M14
M14 全長:1127mm 重量:4450g 口径:0.30in(.308:7.62mmx51mm) 装弾数:20発 |
多分、海兵隊的には現在最後の漢の銃。
M1ライフルの、これまで指摘されてきた欠点の改善とNATO標準として採用される新型弾薬を使用できる新型ライフルとして1957年に採用(海兵隊は、少し遅い筈:未確認)。
M1譲りの露出したオペレーションロッド。非常に持ち方が難しいのもそのまま。
デザイン的にはM1ライフルとM1918BARを継承。軽量化を目指した結果、M1より重くなりました。
M60の採用と共に、アメリカ軍の装備を更新させたものの不運にも、次の戦争は想定されたヨーロッパなどではなく、ベトナムで行われたために1965年にはAR15/M16に取って代わられ、アメリカ軍の歴史で史上最短命のライフルとして名を残してしまいます。
まあ、どのみち瞬時に切り替えるという操作とは無縁の構造と位置ですが。
しかし、海兵隊では、M16の性能を疑問視-というより、いつものように陸軍優先でM16が回ってこなかったために1967年まで主力ライフルとして使用され、M16採用後も長距離射撃の重要性を理解していたこともあり、使用は継続されました。
M16A1が普及すると一端は倉庫の備蓄となりますが、装備リストには残り、2003年のイラク・フリーダム作戦以降、長距離射撃性能の高いライフルが求められ、一番手っ取り早い手段としてM14が再び現役に付くことになり、誕生から半世紀。やっと本領を発揮する舞台に立つことができました。
外見上は、M1ゆかりのロータリーボルト方式ですが、ガス圧システムには変更が加えられています。
M14は、曲銃床のためにフルオート射撃で安定性が悪いというのも短命の理由の一つとされています。同世代で直銃床のFALをL1A1として採用したイギリス軍はフルオート機構を外し、西ドイツ軍のG3ライフルも腰だめ射撃以外のフルオートの使用は禁止していることから、反動のきつさは銃の設計ではなく、使用弾薬の問題と言っていいか、と。
実際に撃ってみました。
※イギリスは、若干、小口径の弾薬を開発していましたが、アメリカ側の「30口径は完全理論」を覆せず、結局、立ち消えになりました。そのくせ、10年も絶たずにより小口径の5.56mmのM16を採用しているのですから、イギリスからすれば、この野郎、という訳で、L85/SA80の原型L70を4..85mm(ここまで小口径だと実用性に乏しいとか)にしたのは、その恨みを忘れていないイギリスらしいブラックジョークだ、という話もあるくらいですし、L70も、その立ち消えた弾薬を使用するEM-2ライフルが原型です(諦めが悪い)。