海兵隊の組織構成
海兵隊に限らず、アメリカ軍は基本となる部隊を元に状況によって、他の部隊によって増強させる柔軟な運用を行っています。
例えば第2次世界大戦中は、作戦参加師団は、単独ではなく陸軍や海軍などからの派遣部隊による増強を受けていますし、湾岸戦争においては第1海兵師団が歩兵師団としての増強、第2海兵師団が機甲師団としての増強を受けて作戦行動を実施しました。
また、時代によっても編成が逐次変えられ、最近では1980年代から1990年代にかけて大規模な組織変更を実施しています。
基本構成(2006年現在)
海兵隊
総司令部 | ワシントンDC |
太平洋海兵隊 | ハワイ州キャンプ・H・M・スミス |
大西洋海兵隊 | ノースカロライナ州キャンプ・レジューン |
ヨーロッパ海兵隊、南方海兵隊、中央海兵隊は常駐部隊を保有しないが、太平洋及び大西洋から派遣された部隊を指揮下に置く。
海兵師団(Marine Division:MarDIV)
第1海兵師団 | カリフォルニア州キャンプ・ペンドルトン |
第2海兵師団 | ノースカロライナ州キャンプ・レジューン |
第3海兵師団 | 沖縄キャンプ・スメドリー・D・バトラー |
第1海兵師団は、司令部大隊×1、歩兵連隊×3、砲兵連隊×1、偵察大隊×1、通信大隊×1,強襲上陸車両(水陸両用車)大隊×1、軽装甲車両大隊×2、戦車大隊×1、工兵大隊×1、軍楽隊×1
第2海兵師団は、司令部大隊×1、歩兵連隊×3、砲兵連隊×1、偵察大隊×1、通信大隊×1,強襲上陸車両(水陸両用車)大隊×1、軽装甲車両大隊×1、戦車大隊×1、工兵大隊×1、軍楽隊×1
第3海兵師団は、司令部大隊×1、歩兵連隊×2、砲兵連隊(二個大隊)×1、偵察大隊×1、戦闘攻撃大隊(水陸両用車中隊及び軽装甲偵察車両中隊)×1
第1と第2の師団長は少将。第3師団長は規模が旅団規模のため、准将。
第5海兵師団、第6海兵師団は第2次世界大戦中に編成され、戦後解隊。第5海兵師団は一端復帰しますが、ベトナム戦争後の軍縮で再度活動を停止。
海兵航空団(Marine Aircraft Wing:MAW)
第1海兵航空団 | 沖縄瑞慶覧 |
第2海兵航空団 | ノースカロライナ州チェリー・ポイント |
第3海兵航空団 | カリフォルニア州ミラマー |
定数:18,567名
司令部、司令部中隊、海兵航空管制群、海兵航空団支援群、海兵航空群(固定翼機)×3、海兵航空群(ヘリコプター)×2
後方作戦支援群(Force Service Support Group:FSSG)
第1後方作戦支援群 | カリフォルニア州キャンプ・ペンドルトン |
第2後方作戦支援群 | ノースカロライナ州キャンプ・レジューン |
第3後方作戦支援群 | 沖縄牧港 |
定数:9,159名
司令部管理大隊、医療大隊、歯科大隊、整備大隊、補給大隊、工兵支援大隊、上陸支援大隊、車両輸送大隊
予備役(Marine Reserve)
第4海兵師団 | ルイジアナ州ニューオリンズ |
第4海兵航空団 | |
第4後方作戦支援群 |
軍楽隊、尋問通訳チーム×6、防諜チーム×3、センサー・管制・管理小隊・画像解析隊等を含む
海兵空地任務部隊(MAGTF)
海兵隊が出動する際に編成される。規模によって、海兵遠征軍(MEF)、海兵遠征旅団(MEB)、海外遠征隊(MEU)、特殊目的海兵空地任務部隊(SPMAGTF)
MEF(Marine Expeditionary Force:海兵遠征軍)
I MEF | カリフォルニア州キャンプ・ペンドルトン |
II MEF | ノースカロライナ州キャンプ・レジューン |
III MEF | 沖縄キャンプ・コートニー |
3-6万人規模の部隊。指揮官は中将。
海兵師団×1、航空団×1,後方作戦支援群×1
但し、上記は通常編成時で作戦規模により増強される。
旧名称は、海兵水陸両用軍(MAC:Marine Amphibian Corps)
MEB(Marine Expeditionary Brigade:海兵遠征旅団)
第1MEB | カリフォルニア州キャンプ・ペンドルトン |
第2MEB | ノースカロライナ州キャンプ・レジューン |
第3MEB | 沖縄キャンプ・コートニー |
14,000人規模(通常時)の部隊で、指揮官は准将。補給無しで30日の緒戦活動を実施可能。
海兵連隊、海兵航空群、旅団後方支援群によって編成。使用する揚陸艦は、21-26隻。
なお、第4MEBは、対テロを主任務とする部隊で、海兵警備部隊大隊、対テロ歩兵大隊、化学生物兵器事態対処部隊、海兵警備歩哨大隊によって編成される(2006年2月24日MARSOCに任務を引き継ぎ活動を停止)。
MEU(Marine Expeditionary Unit:海兵遠征隊)
恒常的に使用され、緊急即応部隊として4-6隻の揚陸艦に乗船して待機。
2,000人(通常時)規模で、指揮官は大佐。大隊上陸部隊(BLT)と混成航空団(ヘリコプター及びAV-8ハリアー)、MEU後方支援群によって編成される。
派遣される基本単位で、グレナダ(第22MAU)、ベイルート(第21、第22MEU)、パナマ(第26MEU)、ソマリアなどに派遣された際も、この規模。
その他
MARSOC(Marine Special Operations Command)
本拠地:ノースカロライナ州キャンプ・レジューン
USSOCOMに属する海兵特殊作戦軍団。2006年2月24日、第4MEBの任務を引き継いで発足。以下の部隊で構成され、規模は2600名(予定)で司令官は准将。
海兵特殊作戦大隊(MSOB:Marine Special Operations Battalions)
海兵特殊作戦支援グループ(MSOG:The Marine Special Operations Support Group)
外国軍訓練部隊(FMTU:The Foreign Military Training Unit )
主要任務は、直接戦闘、特殊偵察、外国内政の防衛、対テロリズム、諜報作戦、そして不正規戦。
偵察大隊(Force Recon)
上陸作戦の事前偵察等を任務とする。
偵察中隊の定員167名。本部小隊(55名)、偵察小隊(17名。少尉1人含)×5、補給・役務小隊(27名)。
第2次世界大戦中に誕生した水陸両用偵察大隊を1955年に名称変更したもの。
海兵隊軍楽隊(The President's Own)
海兵隊及び大統領直属の軍楽隊。
ホワイトハウスでのコンサート、大統領の就任演説の演奏以外に国内ツアーを行っている。
指揮官は中佐。軍楽隊長は上級曹長。軍楽隊員117名、スタッフ27名。
海兵隊内において、唯一、軍事教練を必須とされない部隊。