日本列島徒歩縦断記 北海道→鹿児島 |
15【通過証明】 日本列島を端から端まで歩いたと言っても,単なるホラ吹きと思われるかも知れないので,歩いて通過した証明を各都道府県で最低1カ所は書いてもらうことにした。 大抵は県庁や市役所,役場の役所に立ち寄って書いてもらった。 しかし,今考えると赤面の至りである。 県庁や市役所に立ち寄っては,「知事に通過証明をいただきたいのですが。」「市長に書いていただけませんか。」と通過証明の署名をお願いしていたのだから,図々しいとしか言いようがない。若気の至りとはことのことだ。 でも,どこの人達も本当に親切だった。 快く引き受けていただいた上に,思わぬ激励の一文までも添えてあったりした。 ある人は,私に 「その熱い気持ちをいつまでも忘れずに大切にしなさい。」 と言って,汗まみれの汚れた私の手をぐっと握りしめ, ある人は,ポケットの財布から取り出したお金を私の手に押し込んで 「絶対に最後まで頑張れ」 と涙を流しながら励ましてくれた。 どこの馬の骨とも分からぬ見ず知らずの私に,である。 これらの人達が教えてくれた無償の親切は,今でも事ある毎に思い出して,自己中心的性格の自分を戒めている。 16【1日当たりの歩行距離】 計画段階では,1日に最低45キロ程度歩くことを予定していた。 全行程が3,000キロあるので,それでいけば,2か月ちょっとで歩けるのではないかという計算である。 しかし,やはり机上の計算は最初から破綻した。 1日目は半日だから別として,2日目,3日目と最初のうちは,歩いても歩いても目標の距離に至らないのだ。 机上の計算には無かったマメ,強烈な紫外線,猛暑による疲労,筋肉痛,キャッシュカードが使える銀行が無い,などなどの予期せぬ事情が加わって,北海道では1日に30キロ程度という日さえあった。 函館に着いたとき,資金が底をついてきたのでキャッシュカードで金を下ろそうとしたが,そのキャッシュカードが使える銀行が函館には無く,結局,実家に連絡して,局留めの郵便為替で当面の資金を送ってもらった。このときは丸1日足止めを食うというアクシデントだった。 東北に入ってからは,雨が降り続いたものの,足が痛い中で何とか40キロ超のペースで歩けるようになっていた。 そして,中間点である静岡県に入った頃は日に50キロ前後を歩くようになり,その後は,50キロ以上,あるいは気分が乗れば60キロを歩いた。 中国地方に入って,ある日,1日にどのぐらい歩けるのか試してみることにし,明け方から深夜までの歩き,1日に70キロ以上を歩いた。 普段は,後々のことを考え,55分歩いて5分の小休憩のパターンであったが,この時は小休憩なし,食事もさっさと済ませ,ひたすら距離を出すために歩いた。記憶に残っているのはアスファルトの灰色の色と暑かったことだけである(笑) 歩いている道々で,沢山の人から「私の家に寄って行きなさい。」「泊まっていきなさい。」という暖かい声を掛けていただたい。 ただ,私も縦断完遂との目的があり,これに全て甘えていると何時までたっても鹿児島にたどり着くことが出来ないので,早い時間帯でのものには,御厚意だけ頂戴し先を急いだ。 しかし,それでも明るいうちから泊まらさせていただくことになることもあった。 また,途中通過する県には,寄っていくように言われていた先輩や親戚の家もあった。 その家に,うまい具合に歩き終わった夜に到着すればいいのだが,そうはうまくはいかなかった。お昼に到着したのが何回もあった。そうなるとその日は半日しか歩けず,距離も20〜30キロ前後だった。 しかも,その夜は歓迎の宴会になるので,翌朝は決まって二日酔いで寝坊することになり,出発時間が大幅に遅れるのである(笑) 明石市では,いとこが遊んでいけというので,丸1日を休養日に回し,1mも進まなかったこともあった。 結局3,000キロを63日で歩いたので,単純に1日当たりの平均歩行距離を求めれば47.6キロになる。 しかし,先ほど書いたように,全ての日をフルに歩いた訳ではなく,合計すれば丸5日間ぐらいは歩いていないので,実際に歩いた58日で1日当たりの歩行距離を求めると51.7キロになる。 二日酔いによる寝坊もせずに丸1日ひたすら歩いて日本を縦断しようと思っている人は,後者の方が参考になるかも知れない。 また,全行程を三つに分けて1日当たりの歩行距離をみると,北海道では約40キロ,東北から静岡付近までは約45キロ,静岡付近から鹿児島までは約55キロということになるのではないかと思う。 |
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