日本列島徒歩縦断記

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北海道編              



【北海道から本州へ 8月5日:17日目】
 
 昨日からの雨が止まないことと,昨夜は,北海道からのフェリーが午後11時に本州に着いたため,寝たのが遅くなり,この日の出発は午前10時30分。
 
 本州の1日目は,雷を伴った大雨の国道4号線を黙々と南下。
 体はびしょ濡れ,心もびしょ濡れ・・・

 午後5時30分,十和田市街地手前のバス停にあるバス待合小屋に着。
 この夜はここで野宿。屋根があると雨をしのげるのでいい。














【岩手県の駐在さん 8月6日:18日目】
 
 十和田のバス停を午前4時50分に出発。
 昨夜までの雨が嘘のようにあがり,久しぶりに朝日を見ながら国道4号線を歩く。

 夕方,青森県から岩手県に入る。
 岩手県に入って直ぐの二戸市の金田一にあった駐在所に立ち寄って,この先に野宿できるような公園かキャンプ場がないか尋ねてみた。
 対応してくれたお巡りさんは,最初どこが良いか調べていたが,思い出したようにどこかに電話を掛け「あんたのとこ,旅の人を泊めるべぇ?」と聞き,「だべ,だべ」と言って電話を切った。
 お巡りさんは,「この先に公民館がある。そこは旅行者を泊めてくれるから,そこに泊まりなさい。公民館にはお願いしてあるから。」と言ってくれた。どこに電話をしているのかと思ったら,そういう所を調べてくれていたのだ。
 しかも,「タダだべ」とのこと。これは助かる。

 お巡りさんのお陰で,この夜は金田一公民館にタダで泊まることが出来た。しかも,畳,布団である。ゆっくりと寝ることが出来た。

                     
                       青森県から岩手県にはいる県境










【焼き肉 8月7日:19日目】

 金田一の公民館を午前6時に出発。
 この日も国道4号線をひたすら南下。
 
 午後7時15分,岩手県玉山村の寺村公民館が見えた。
 公民館では宴会が開かれており,たくさんの人が呑んでいた。
 そこにいた人に,適当なところにテントを張らせてもらえないかお願いしていたら,呑んでいた人達に呼ばれて,そのまま私も宴会の中に入ることになった。
 私が鹿児島まで歩いている途中であることを知ったら,「食え,食え」と言って,焼き肉を嫌というほど食べさせてくれた。久しぶりに味わう満腹感だった。それに酒もたっぷりと(笑)
 結局,この夜は宴会が終わった公民館の中に泊めてもらった。



 
 







【岩手県庁 8月8日:20日目】

 朝から土砂降りの大雨。
 寺林公民館を午前7時30分に出発。

 岩手県盛岡市に午後3時着。
 岩手県庁で通過証明を書いてもらう。
 ここの秘書課の皆さんは,感じの良い方ばかり。
 通過証明に「輝く青春に幸あれ」と添えてあった。

 午後7時30分,道路沿いにある工場の敷地に寝させてもらう。


              












【前進あるのみ 8月9日:21日目】

 夜明けとともに出発。
 この日も国道4号線をひたすら南下。
 花巻市,北上市を通過し,水沢市へ到着。
 夜は水沢市にある中学校の自転車置き場にテントを張って野宿。
 54km前進。













【宮城県入り 8月10日:22日目】

 水沢市を午前6時出発。
 一関市を通り,午後に宮城県に入った。
 午後6時30分,宮城県築館町のドライブイン横の空き地にテントを張って野宿。













【親切 8月11日:23日目】

 雨。
 築館町を午前7時に出発。
 今日も国道4号線をひたすら南下。

 午後6時,宮城県黒川郡富谷町を通過中に,野宿する公園かキャンプ場はないか尋ねるために,国道沿いにあった民家に寄った。
 そこの人から何をしているのか聞かれたので,鹿児島まで歩いていることを話したら,「泊まっていきなさい」と言ってくれた。この日は雨で疲れていたので,この親切は大変助かった。
 久しぶりに風呂に入り,温かいごはんをいただき,ゆっくりと寝ることができた。
 この家の人は,それ以来,毎年秋になれば取れたてのお米を送ってくれる。














【仙台市通過 8月12日:24日目】

 富谷町の民家を早朝に出発。
 出るときに,そこのおばあちゃんが「昼飯代にしなさい」と言って,お金を持たせてくれた。感謝。

 仙台市を昼前に通過。
 宮城県庁で通過証明を書いてもらう。

 その後,更に国道4号線の南下を続け,夕方到着した宮城県大河原町の公園で野宿。
 公園の近くの人からトウモロコシをごちそうになり,蚊取り線香をもらう。

                
 











【福島市通過 8月13日:25日目】

 朝から雨。
 大河原町を午前5時30分に出発。
 白石市を過ぎて福島県に入る。
 午後6時,福島市を通過。
 午後8時45分,福島市から10km近く南下したところで野宿。たまたま廃車のバスがあり,その中に寝る。














【女子大生に囲まれて 8月14日:26日目】

 朝から雨。
 廃バスを早朝出発。
 午後,福島県郡山市に到着。
 郡山市では,東京の寮のO先輩の実家に泊まることになっていた。夏休みで先輩も実家に帰ってきたのだ。

 縦断中は色々なところで酒を飲んだが,一番思い出に残っている酒のシーンは,福島県郡山市のO先輩の実家に寄ったときのものだろう。
 東京の某大学の応援団員であるそのO先輩は何故か女性にもてた。
 午後,その先輩の家に到着し,先ずはお母さんから2度風呂に入るように言われた。2回入りなさい?ん〜,かなり臭かったようだ(笑)
 夕方から先輩の実家で夕食とお酒をいただき,ほろ酔い気分になっていたら,先輩が「今から飲みに行くぞ。」と言って,その後に「驚かないように。」と付け加えた。
 何のことか訳も分からず後をついて行くと,その飲み屋の二階の一室には10人以上のの女性達がいた。
 そこは女子大生だけの飲み会で,先輩とは高校の同級生とのこと。その飲み会に先輩も呼ばれたらしい。先輩はついでに私も連れてきた,という経緯だった。
 しか〜し,にひひ,鼻の下が自然に伸びてくるではないか。
 宴は既に盛り上げっていて,私たちは到着するなり,かけつけ1杯,2杯,3杯と次々に呑まされた。
 益々盛り上がってきた頃,先輩が「お〜,俺,ちょっと行くとがあんから。迎えに来るから心配すんな。」と言い残して出て行った。どうしたんだろうと思いながらも,そして先輩の「驚かないように」という言葉を思い出し,一瞬悪い予感を感じながらも,ぴちぴちの女性に囲まれた楽しい宴会に気をとられ,そんなことなど直ぐに忘れた。
 そうこうするうちに座がかなり乱れ始めてきた。
 このあたりから悪夢が始まったのである。
 気が付けば私の周りを彼女達が取り囲み,私に「呑め呑め」と勧めるのである。「どうも」と言って呑むと,次の彼女が注ぐ,更に次の彼女が注ぐ,その繰り返しで,さすがに呑めなくなってきた。
 すると,「なにぃぃぃぃ〜,あんたぁ〜,私の酒を呑めない〜?」
 こ,怖い,これは何だか怖いと思って,やむなく無理に呑んだ。
 ところが,直ぐに次の彼女が注ぐのである。
 私が呑まないでいると,その彼女も「あ〜た,私らより一つ後輩だんべぇ〜,呑めよ,ほらぁ〜,ひっく」と絡んでくる。東北弁と標準語がごっちゃになってもう無茶苦茶である。
 やむを得ず,必死になってこれを呑むとまたまた別の彼女が注いでくるではないか。
 「いや〜,本当にもう結構です。」と言ったら,今度は突然その場に頭からうっ伏し,大泣きしながら「うぇ〜ん,うぇ〜ん,私の酒が呑めないんだってぇ〜,うぇ〜ん」ときた。みんな私の方を見ている。
 う,何だ,この雰囲気は何なんだ,まずい,呑まなければいかん,と再び無理に呑んだ。
 後はこの繰り返しである。まさに悪夢である。
 「ちょっと用を足してきます」と言って逃げようとしても「おしっこ?男だったら小便なんか我慢するべぇや!」と言われるし,大変な状況になってきた。先輩が「驚くな」と言ったのはこういうことだったのだ。
 これは何としてでも逃げなければと思って,捕まれていた腕を必死で振りほどき,二階から一階に転げるように(笑)降りた。逃げるときに部屋を見回したら,既に半分ほどが寝込んで,後の半分は泣く,愚痴るの状態になっていた。
 ちょうどそこに先輩が現れ,場所を変えて三次会へ。
 そして,次の日は強烈な二日酔いのため,出発は昼前になった。
 














【桃 8月15日:27日目】

 昼前に郡山市の先輩の実家を出発。
 この日は午後から雨になったが,先輩の実家を出るとき,先輩のお母さんが持たせてくれたおにぎりのお陰で二日酔いを何とか克服。

 国道沿いの店のおばさんがくれた2個の桃をくれた。
 「頑張れ」と思うから,どこの誰かも分からない人間に大切な商品をくれるのだろう。
 こんな人達の応援が孤独な単独縦断を後押ししてくれている。

 この日も国道4号線をひたすら南下。
 午後8時,福島県白河市を過ぎて隣の西郷村に到着。栃木県との県境まであと5〜6kmのところにテントを張って野宿。
 
 8月15日は終戦記念日。日本列島の徒歩縦断は,平和でなければ出来ないこと。平和に感謝しつつ歩いた日でもあった。













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    第2章 3,000km&63日
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    第3章 あんなこと,こんなこと
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