3.音楽によせて 〜私の思い巡らせたこと〜





序文にかえて_あらかじめ用意された言い訳

 私のKompositionhütteも長い前置きを過ぎ、ようやく当面の本題に入る事が出来る。それは自分の音楽や、音楽一般に対しての思い巡らせであるとか、そしてどのような在り方でもって音楽と関わっているのかといった、音楽に携わる者としての内容を、恐らく私とは音楽一般に対する捉え方も、考え方も異なるであろうあなたに向かって語りかけるという事である。

 しかしながら、語りかけるとはいえども、それは生の言葉では無くして、すでに確定した文章としてあなたに”読まれるもの”として提示しなければならないのであり、この件についてあらかじめ言い訳のひとつを表明しなければならない。すなわち、私は音楽家のはしくれであって、文筆家の類ではないし、もとより文才など無いに等しい。したがって、その文章の構成や表現に関する不備、あるいはまた誤字脱字などの不手際等については、あなたの寛大なる人間性と、洞察力、及びそれを基とする忍耐力でもって、斯くの如き拙文を受け止めていただけたのなら、私はあなたに対して、その人間性において多大なる感謝の念を懐かずにはいられないであろう。

 さて、この”音楽によせて”において、私が記すべき事柄の内容から、当面は二つのカテゴリーに分割(今後、増える可能性もある)しておきたい。

・カテゴリーT

 こちらのカテゴリーでは、その都度における音楽への私的な思い巡らせを記していきたいが、しかし私は音楽においてある程度の期間、それと関わってきたとはいえ、未だ浅学の身であり、まだまだ学ぶべき事は多い。したがって、このカテゴリーにおいて記される各々の内容は、根本においては不変であるものも有るだろうし、また一方では私自身が、今後とも音楽や作曲、また芸術に関わる事柄について学ぶ中で、あるいは音楽に向けての関心や興味が移ろう事により、そこに見解の変化を見出す事は充分有り得るだろう。しかし、そのような場合にあっても、それが音楽や芸術に向かう見識のわずかばかりの深まりに依る事からの発露であるならば、むしろ大いに結構な事であると思う。

 よって私はここで、自身の音楽思想をある流れに沿って順序だてて述べ立ててみたり、それを体系化し、ひとつの堅固な構築物として提示する事などを目指すものではない。それはむしろ任意であり、不定形なその都度の思索であり、また私の気まぐれによってさえも構成され得るであろう。時に表面上は音楽とはおよそかけ離れた感のある話題が取り上げられる事もあるかも知れない。したがって、ここに芸術たるべき音楽についての高尚なる学的知識の羅列や、理路整然とした理論的・概念的解説を期待された場合にあっては、深い失望の底へ沈んでしまう事は必定であろう。しかしながら、例え如何なる文脈の内にあったにせよ、そこに通底するであろう私なりの眼差しというものを読み取っていただけたならば、その事において私がここに意図するひとつの要件は満足せられるのである。

・カテゴリーU

 また、あわせてここに私が興味深く関心を持っている、いわゆる現代音楽などと呼ばれている音楽の作曲法や、それに関連する事柄を随時紹介していきたく思っている。なぜならば、それが私の音楽に直接関わるものであるということ以前に、無数にある音楽系サイトにあっては、ほとんど取り上げられる事のない分野であろうし、であるからこそ、たとえわずかばかりの方でもいいからこの場を機縁に、何かそれまでにはない音楽への興味や関心を向けられたら、という思いによるものである。それはまた他の多くの音楽系サイトとの差別化を図るための企てのひとつでもある。今後しばらくはこの点に関して意識的に力点を置きたいと思っている。ともあれ、音楽の裾野は思いのほか広いものである。


 本サイトの歩みは始まったばかりである(2003.4.28)。果たしてこのKompositionhütteがいつまで続くのかは全く分からないが、例えばこのような思索と探求との変遷を、将来における私自身が己の辿ってきた道筋としての見解の変化というものを振り返ってみるという事は、実のところ他ならぬ私自身の楽しみでもある。さて、その時に在って、果たして私は如何なる思いを持って、音楽への果てしなき途上にたたずむであろう、その都度の私自身に出逢うのであろうか?



<音楽によせて・目次>
カテゴリーT カテゴリーU

 音楽によせて (1)
 ・私における音楽の始まり・・・自己紹介の一環として/基本線−T/他

 音楽によせて (2)
 ・私の方向性_開かれた音楽形式へ向けて/進展するものといつも変わらぬそれ/他

 音楽によせて (3)
 ・シェーンベルクの12の音と誤解/基本線 - U 創造性/他

 音楽によせて (4)


 以下、随時追加の予定


 音楽室 (1〜9)
 ・現代音楽系の作曲に関する連載小講座

 音響室
 ・初歩的な音響の知識から初期電子音楽に至るまで






 2002.11.22

 2003.9.23 一部改訂





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