それは人の理を超えて、世界と共に歩む力を持つ者。
それは人の善悪を超えて、世界を導く宿命を持つ者。

ザ・ワールド THE WORLD:世界
Tarot-No.21

2006/09/14改訂

本体名:DIO<ディオ>

ディオ・ブランドーの頭部とジョナサン・ジョースターの肉体を持つ吸血鬼

能力:時を数秒止め、その中で自分だけが動ける

スタンド形成法射程距離パワー
身体同形体 2〜10m(下記参照)

タロット解説

宇宙・人類・個人といった存在における、その生涯や一時的に行う計画などを、成長する一つの「生命」、範囲を持った一つの「世界」と捉え、これら「生命世界」が進化や目的の実現へ向かう際に起こる変化の、普遍的な共通性を図像化したものである『生命の樹』。「セフィロトの樹」とも呼ばれるそれは、「状態」を表す10個の球体「セフィラ」と、それを結び「変化」を表す22本の小径「パス」から成る。そのパスに対応する22枚の「タロットカード」のうち、「総括せしもの」を暗示する「アトゥム」のセフィラと、「更新せしもの」を暗示する「オシリス」のセフィラを結ぶ「世界」は、「依存と束縛からの解放」を暗示するカードである。

生命世界が効率的に成長するためには、進入した分野の中に腰を据える「拠点」を構え、大地に根を張る樹のように物理的に、親に養われ成長する子供のようにエネルギー的に、拠点に少なからず「依存」する必要がある。しかし反面この依存は、その拠点でのそれ以上の成長が見込めなくなるなどして別の分野へ向かおうとする際には、コンセントからケーブルの長さ分しか離れられない掃除機のように、生命世界をその拠点へと「束縛」する鎖となってしまう。「世界」は、この依存と束縛の鎖の中から、新しい分野への移動に邪魔となるものを一時的に切り離し、生命世界を「解放」するタロットである。これによりその生命世界は、切り離された鎖の分だけ得られた自由の範囲内で、新たな分野へと向かうことが可能となる。(また、「星」から「世界」までのタロットから成る「更新段階」に属するこの「解放」は、「生命の樹」の始まりへと戻る生命世界に「自在性」を取り戻す、概念的な「空」の元素の役割を担うこととなる) 

しかし依存を切り離すということは即ち、失った依存対象の分だけ生命世界が弱体化するということである。ゆえにその状態に耐えるために生命世界は、無駄な要素の「浄化」と残った要素の「融和」とによって、自身の堅牢さを高めておく必要がある。また、新たな分野でさらなる成長を求めるには、目指すべき目標への「変容」とそれを始めるに足るだけの技能の「堆積」も必要である。そしてこれらの準備は、生命の樹において「世界」を取り囲む4枚のタロット、「星」「月」「太陽」「審判」によって行われる。そしてさらに、この「更新段階」の中において「世界」のタロットは、胎児が産まれるようにそれまで自分の一部であった母体から自らを分離させ、またはヘビが脱皮するように古き衣を脱ぎ捨て自分を生まれ変わらせ、古い自分から独立した新しい自分、新しい一つの「世界」を生み出す中心的役割を果たすことになる。

なお、「世界」によって切り離された要素は、本来はその生命世界にとって必要なものである。(必要でない要素は「星」のタロットの時点で除去されているはずである) このためそれらの要素は、移動させた掃除機を別のコンセントに繋ぐように、新分野への進入後にそこに構えた新たな拠点で、同等の要素または代替となる要素が再度獲得され、接続し直されるのが理想である。しかし、新分野でそれらが100%完全な形で取り戻される保証は無く、その場合その生命世界は取り戻せなかった依存の面において弱点を抱えることになる。この傾向は、生命世界がより高みを求めて新分野を選ぶほどに起こりやすい。しかしそれは生命世界のキャパシティが無限でない以上、オタマジャクシがカエルになる際にえら呼吸を捨てるように、人間が1日24時間で行えることが限られているように、さらなる成長の可能性と引き換えに避けられないことでもある。その意味において「世界」は、本来必要な要素の中から、目指すべき目標のため何を切り捨てることになっても構わないかを選択するタロットであるともいえる。

我々が生きるこの世界は、流転する中で発生してくる新しい物事をどんどん自らに取り込み、それと引き換えに過去の物事をどんどん押し流していく。それは人間の肉体が代謝によって少しずつ入れ替わり、いつのまにか体質を変えてしまうように、世界の在り方を少しずつ入れ替え、いつのまにか人々の生活習慣や常識・善悪の規範さえも大きく変えてしまう。世界を構成する一部である人々や国家は、移り変わる世界の中で時代遅れとなった感性や能力を捨て切れずに少しずつ抱え込み、それらは伸びるほどに強まるゴムの反発力のように、その歩みを徐々に鈍らせていき、いつか終わりを迎えさせる。しかし世界は、人々の世代交代や国家の興亡によってそれらを容易く切り捨て、何物にも囚われることなく歩み続けて行く。このような、自身が何を失いどんな姿に変わろうとも進み続けることが可能な性質こそが、世界に終わり無き命を与えているのである。

科学技術の進歩や人類の理性の発達は時に、それまで大事にされてきた文化や美徳とされてきた考え方と対立し、その場合遅かれ早かれ確実に、「新しく優れたもの」は「古き良きもの」を駆逐し滅びへと向かわせる。これに対して人は、古き良きものを失ってまで進んだ先に訪れる未来に、否定的な予測をしがちである。しかしこのような時代の変化は、人間が不便より便利を、非効率より効率を、退化より進化を望む本質を持つ以上、決して避けられない運命である。また、これまでも世界は常に何かを失い続けながら先へと進んできたのであり、その一時代に生きているに過ぎない我々は過去に既に失われてしまった古き良きものを知ることはなく、その視点からすれば、今目の前で失われようとしている古き良きものへの拘りは近視眼的な感傷でしかない。そして何より、失われる古き良きものを大事に思うあまりの未来への侮蔑や自虐は、人の歩みの力を大きく鈍らせてしまう。変わりゆく世界がこの先上手く行くかは、まず人が未来に希望と誇りを持てるかに懸かっている。変わりゆく世界が、変わりゆく自分が、古き良き過去より優れた新しき良き未来を築いていける価値を持つと信じる「自尊」の心。それが人に対して「世界」のタロットが示す重要な意味である。

スタンド解説

■類稀なる知力を宿すディオ・ブランドーの頭部と、類稀なる体格・筋力・生命力を宿すジョナサン・ジョースターの肉体を持ち、さらに不老不死と強大なパワーとを「石仮面」から得た存在である吸血鬼「DIO」を本体とする、「不滅のスタンド」にして「最強のスタンド」。その姿は黄金の一色に染まり黄金のオーラを纏う、DIOと同じ身長・体格を持つ人間型で、全身の筋肉ははち切れんばかりに逞しく、さらに胴体や前腕などを圧着するように覆う装甲のようなパーツ・背中に取り付けられたボンベは、このスタンドを同身長・同体格の「スタープラチナ」に比べより巨大に見せている。また、その両手の甲には時計の文字盤を模した装飾が為され、鼻先から上をマスクで覆われたその顔は感情を表すことなく厳格さを漂わせている。(余談だがこのマスクを正面から見た形は、「生命の樹」下部の「塔」から「世界」までのパスが構成する図形に良く似ている) 

■「ザ・ワールド」は、吸血鬼DIOがその身に蓄える、他の生物から奪った膨大な生命エネルギーにより、通常の人型スタンドを遥かに上回るスタンドパワーを持っている。しかし反面「ザ・ワールド」はこの有り余るパワーを制御するために、スタンド体を純粋化・一元化し堅牢さを高めた状態を保っておく必要がある。このため「ザ・ワールド」はそれを損なう「能力」と呼べるものは一切持てず、「スタンドの肉体の動作によって行えること」しかできない。しかしそれゆえに、肉体能力のみに特化された「ザ・ワールド」の持つ性能は他の人型スタンドの常識を超え、そのパワーはロードローラーを放り投げるほどに強く、そのスピードと動きは無数のナイフを瞬間且つ精確に標的へと投げ刺すほど速く、さらに有り余るパワーと高められた堅牢さの副産物として、そのスタンド体は10mもの射程を持つ。(ただしこの射程10mでの活動は、酸素ボンベを背負って水に潜るダイバーのように、あまり長時間はもたない可能性がある) 無論これらの性能を基盤としたその戦闘力も、他の人型スタンドの比にならないほど高く、特に両拳による連打(通称「無駄無駄のラッシュ」)の威力は凄まじい。また、吸血鬼であるDIOと「ザ・ワールド」は共に「太陽光」と「波紋」のエネルギーを弱点とし、直射日光や波紋使いの攻撃を受けると肉体が蒸発するように消滅してしまうが、代わりに通常の物理攻撃による肉体の損傷は、拳が砕けようと腹に穴が空こうと数秒〜10数秒で完全に治癒できる。(このため物理的手段でDIOを殺すには、スタンドか本体の「脳」を一気に破壊するしかない) そしてさらにDIOは、「ザ・ワールド」の性能と可能性を模索する中で、この「究極のスタンド肉体」により可能となる「更なる能力」を自覚し、獲得する。

■この世界の万物は、世界という絶対的な存在と絶対的な物理法則を基盤として、それに依存する形で存在している。しかしその中において「ザ・ワールド」は、膨大なエネルギーとその高い統一性、それに加えて物理法則の束縛がゆるい精神エネルギー体であるという性質もあいまって、世界からの非常に高い独立性を有している。そしてこの独立性による『限界突破』能力としてこのスタンドは、自らを本物の世界から解放された「独立した世界」として活動させることができ、仮に本物の世界に何らかの問題が生じその稼動が停止したとしても、その状況下で通常どおりに動くことを可能とする。ただし、絶対的な存在と物理法則の基に動く本物の世界において、その稼動がわずかたりとも狂うことはまず有り得ないため、通常この面での効果が発揮される機会は無い。代わりにこの能力は、時間を限りなく細かく見ていった果てにある「ゼロに等しい時間の狭間」、本物の世界が仮想的にその稼動を停止したのと同じ状態になる世界、「静止した時の世界」において発揮される。

■「ザ・ワールド」の「静止した時の世界」での活動能力は、DIOが「静止した時の世界」を認識し、その中で動こうとすることで発動される。「静止した時の世界」では、物体の運動から生物の精神まで世界の全ては「時が止まった」かのように静止した状態となり、その中で「ザ・ワールド」(とその能力効果が及ぶDIO)だけが自由に移動・動作を行え、敵に対しても一方的な攻撃が可能となる。その活動持続時間は、ジョナサン・ジョースターの肉体が馴染んでいない状態で約5秒、DIOがジョナサンの孫ジョセフの血を吸いさらに肉体が馴染んだ状態で約9秒である。(なお、当然この能力は間髪入れず連続使用することはできず、一度使用した後に再度使用するには、最低でも数拍の間を置かねばならない) ただし、本来「ゼロ」である時間内でDIOが「余分に」動くと、世界とDIOとの間には「時間経過のずれ」が生じるはずだが、「石仮面」の外法によって物理と生命の理を無視した「不滅の肉体」を得たDIOの身には、どれだけずれが大きくなろうとも「時間経過のずれによる反発力」が発生しない。同じ能力をもつ「スタープラチナ」の本体であり、あくまで人間の身でしかない空条承太郎が「静止した時の世界」で最長5秒動けたことから考えて、もしDIOが承太郎との戦いで死ぬこと無くその先もずっと能力を磨き続けていたなら、あるいは27巻P179での彼のセリフどおり、「1分…10分…1時間」と「静止した時の世界」で動けるようになっていたのかもしれない。

■なお、「静止した時の世界」では時間的な「因果」も停止しているため、「ザ・ワールド」のような「動ける者」の動作によって間接的に起こった事象の「結果」は、時が動き出すまでは保留されるという性質を持っている。例えば「動ける者」が止まった時の中でマッチを擦っても時が動き出すまでは「火が点く」事は無く、紙を水に浸しても時が動き出すまでは「水が染み込む」事も無い。また、「動ける者」が例えばナイフを「手にしたまま」物を刺すことは普通にできるが、ナイフを投げて「手から離れる」と、それは標的に刺さる前にいったん止まってしまい、時が動き出すと同時にスピードを取り戻し、標的に刺さる事になる。(ちなみに「磁石」のような「力場」を発生させている物質の場合、「静止した時の世界」で「動ける者」がそれを動かすと力場も動いて、見た目に離れていても直接触れた場合と同様に、周囲の鉄を引き寄せたりできるようである) 

■そしてさらに、DIOの本体下において「時の止まった世界の中で動ける」能力をもたらす「ザ・ワールド」には、DIO自体から解放されることで発動する「真の力」、本物の世界の在り方をすら変えてしまう力が秘められている。DIOはその力に気付きながらも、結局それを実行しないまま第3部の最終決戦で承太郎に殺され、「ザ・ワールド」も共に消滅してしまう。しかしその力の一部は、さながら本物の世界が不滅であるように、「欠片」になりながらも失われること無く世界に残り、流転する世界が別の物語を紡ぐ中、静かに目醒めるべき時の訪れを待つこととなる。

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