【題意】
易水での別れ。
則天武后の専横に憤慨し、燕の荊軻の故事に自らの心情を重ね詠んだ。
【故事】
燕の太子丹は、秦の人質であった頃、苛酷な扱いを受けた。その秦が、今また易水を越え、
燕に攻め込もうとしていた。丹は秦王(後の始皇帝)暗殺の為、荊軻を刺客として差し向ける。
荊軻は国の命運を担って旅立つ際、易水の畔まで見送りに来た者達に対し、「壮士一たび
去って復還らず」と詠った。
荊軻は秦王の面前で短剣を抜いたが、今一歩で失敗したといわれる。
【詩意】
この易水の地こそ、荊軻が燕の太子丹と別れたところだ
荊軻は憤激の余り、逆立つ髪が冠を突き上げんばかりであったという
「風は物寂しく吹きすさび、易水の水は冷たく流れる
壮士は去り、二度と戻ることは無い」
昔、そう詠った人も今は無い
易水だけが今なお変わらず寒々と流れている
【語釈】
易水=戦国時代、燕の国を流れていた川。
燕=中国戦国時代の国。紀元前222年、秦に滅ぼされた。
荊軻の話は、駱賓王から見て900年位前の出来事になる。
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