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Inside Farming Vol.108


作業量の削減、最後の考察(濃淡と加工)


 前回前々回と、「林檎」という作物に限定した場合の「作業量の削減」の方法について、頂いたメールにインスパイアされながら、思いついた事を書いてきました。最後に、今まで言及できなかった方法について、2つほど列挙して、この問題に対する考察を終えるとしましょう。

 第1には、畑に濃淡をつけるというアイディアの応用として、1本の樹の上下で濃淡をつけるというのはどうか。前々回触れたように、林檎の作業性の悪さは、樹の高さに起因する。そこで、樹の上半分には、ほとんど果実を実らせない、あるいは、全く実らせないという摘果の実施を行うのである。摘果作業のみ脚立や高所作業台による作業を行えば、それ以降の作業は地上からできるから、格段に作業性は上がると考えられる。樹を切って高さを制限する場合と比べると、樹への負担は少なく、葉の枚数も確保できるというメリットがある。また、初めから果実をつけないつもりで摘果をするから、たとえ、果実がついていたとしても、最終的には、かなりいい摘果になっている、というメリットもある。
 ただし、この方法は、比較的品質の高い樹の中間から上部の果実の量が減ってしまうという欠点がありそうでは、ある。しかし、若年の樹(2.5〜3m以下)の樹の2.3m以上を総摘果するということならば、それなりに、いいかもしれない。

 第2には、改植の際に、着色が関係ない品種に植え替えることである。既に、着色が良いと言われる選抜系の品種に変更する点には言及したが、ここでは、「色」が商品価値と関係ない品種にするという提案だ。最近の温暖化により夜間の温度が下がらなくなり、果実の着色が悪くなりつつあることにも対応できる。

 そのための候補は、黄系、青系の林檎である。赤系の林檎に比べて日本では、需要や知名度が低いというデメリットはあるが・・、黄系では長野県が新品種の柱にしようと注力している品種もあるし、酸味の強い外国産の黄色系林檎の需要も一部にはあるという。
 次なる候補は、加工向けの林檎栽培である。最終的に加工に使用されるのならば、見た目にそれほど影響されることもなく、葉摘や玉回しの2ステップを省けるだろう。といっても、ジュース市場は外国の果汁に席巻され、果汁のためのみに生産することは、既に採算ベースには合わない。
 そこで、ケーキ、シャム市場に向けて酸味が強くペクチンが多い「紅玉」を生産するのである。実は、河合果樹園にも年に何件か問い合わせがある品種であるが、従来は、「酸味が強すぎて需要のパイが小さい」「果実が小さく、単位面積当りの収穫量が上がらない」など、「採算に合わず作りづらい」ことが理由で生産していない。また、同理由で全国的にも生産が激減している。その一方で、こだわりお菓子屋さん、ケーキ屋さん、ジャム屋さんの需要があるため、高値品種にもなっている。「低農薬生産」+「販売先が確保されている」なら、かなりいけるかもしれない(河合果樹園が、来年植えても、生産までに3、4年はかかってしまうのがネックだが、・・それまで需要が継続が見込めれば・・してれば植える価値がある)。

 ただ単に、「作業量を削減するためだけに、作業量を削減する」と、その結果は、「作業量を削減しただけ」のものになってしまう。でも、「作業量を削減するために、作業を見直し、作業量を削減した」結果、「品質を維持・向上させながら作業を削減することができる」ならば、「心と体に余裕をもって林檎栽培に取組める」ことが可能になる。そうなれば、園主にも、「10年後の農のスタイル」が描けるようになるかもしれないなあと、・・書いていて、そんな気がしてきました。
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写真、本文とも Copyright(C) 河合果樹園