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Inside Farming Vol.103


規模縮小への道(紀州から1)


 農業の「規模縮小」は面積の縮小が一番手っ取り速い方法なのだけれど、果樹園の場合、農地には林檎が植えてあるために、直ぐに他の作物に転換したり、簡単に他人に貸すというわけにもいかない。かといって、果樹園管理を放棄し放置しておくと、そこが病害虫の棲家になってしまい、周辺の農作物に迷惑がかかってしまう。とにかく、いきなり面積だけを減らせない事情があるのだ。

 そこで、前回のInside Farmingで「耕作面積はそのままで「規模を縮小」するという方法はないものか?」と問題を提起したところ、「温暖化」「兼業スタイル」について以前メールを紹介させて頂いた和歌山でみかん農園を経営する大橋さんが再び便りを寄せて下さった(大感謝)。

 大橋さんは「規模縮小」について、農業従事者が高齢化に直面した場合、後継者がいなくなった場合、所得確保のために農業を兼業化した場合等に、ご自身、あるいは、一般的な農業経営の中でもいつ発生してもおかしくない問題であるとして捉えている。その上で、「果樹園を譲渡したり、他人に耕作してもらったりするのは抵抗がある」という河合果樹園の園主の立場に立って、ご自分どうするか夫婦で検討して下さった(夫婦円満でいいことです!ありがとうございます)。頂いたメールは、数回に分けて掲載させて頂くつもりですが、今回は奥さんの意見を中心に掲載させていただきます。

-----以下、原文のまま引用--------
妻 「畑ごとに作業の濃淡をつけたらどう。産直で販売されているリンゴを育てる畑は手を抜かないで栽培し、残りの畑は商品を作ろうと思わずに、木が枯れん程度に世話したええんとちゃう」
 紀州ではこうした事例もあります。標高が高い果樹園ほど採れるミカンの品質が劣ってくるため、単に量を確保するために手抜きで栽培されるのです。将来、再び商品を栽培するという可能性を残すため、労力をかけられない今を乗り切る緊急避難的な意味で木の生存維持のみを目的にすれば、かなり仕事量が減るのではないでしょうか。
-------引用終り-----------------
 「畑ごと濃淡をつける」とは、園主には全く考えも着かなかった発想です(イイ!!!)。時間が足りなくて、最終的に全ての畑の管理ができない結果を招くことが予想されるなら、年間の作業を開始する前に「管理を省く畑」と「管理を徹底する畑」を決めてしまえばよいという逆転の発想に納得です。確かにこれならば、直売のお客様を満足させる高品質生産と、省力化のどちらも実現できる!。具体的にはどの程度まで管理を省くのかを検討する必要があるでしょうが「今年はこの畑の管理を、他の畑よりも省く」と決めただけでも、農作業が精神的に楽になることが予想されますね。そして「納得して管理を省いた果樹園」と「手が回らなくて管理できなかった果樹園」では、結果的に投下された作業量が同じであったとしても、そこで生産される果実の出来もきっと異なってくるだろう、ということまでも考えられる妙案です。

---------------引用-------------------------
妻 「畑に車が通れるくらい間伐したら、省力化が図れるし、労力も減るやんか」
 紀州では品質を高め、病害中の発生を抑制する目的で間伐が奨励されており、多くの農家はそれを忠実に守っています。しかし作業効率の改善にはさほどつながっておらず、果樹園には段段畑が多く、収穫したミカンを手で運ばざるを得ません。病害中の防除についても、スプリンクラーが導入されたとは言え、かなりの手数を要します。そんな環境下で果樹園に車が通れるようなスペースを設ければ、身体が楽になる上、木を減らすことによって生産規模の縮小につながるというわけです。しかしリンゴ園はすでに、かなり広い間隔で木が植えられていましたよね…。
-------------引用終り------------------
 「作業量を減らす>林檎の本数を減らす>間伐」というショートした発想じゃなくて「作業量を減らす>運搬の利便性を考える>自動車が通れるようにする>間伐>結果的に林檎の本数も減る」っていう発想が、園主には、とっても参考になります。単に間伐するだけじゃなくて、+アルファのメリットも享受してしまおうとするという発想。これですよね、これ。
 園主も実際に間伐に着手しているのですが、この意見を頂いたら、農業を楽しくするために、果樹園の真ん中にテーブルやベンチを設置するために間伐するとか、そんな発想があってもいいのかなー、などと思いました。

 うーん、ここまででも既にかなり参考になりましたが、さらに次回へと続きます。

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