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Inside Farming Vol.104


改植と間伐で規模縮小(紀州から2)


 兼業スタイルになって、農業就労時間が少なくなった園主の一番の課題は「規模縮小」。一刻でも早く林檎園の「規模縮小」をしなければ、林檎栽培、特許事務所勤務、資格試験受験の全てが中途半端になってしまう(ある意味、既に中途半端だが(笑))。
 そこで、今回も前回に引き続き「規模縮小」について、「面積を減らさない規模縮小」=「作業量の削減」という視点からの、大橋さんの提言を紹介させて頂きます(なお、大橋さんが和歌山でみかん農園を経営していながらも、信州の林檎の状況についてなかなか詳しいのは、大学時代を信州で過ごされたというバックグラウンドがあるからなのですね)。

-----以下、原文のまま引用--------
私は次のように考えました。
1、木の改植を進める
 成木ではかなりのリンゴが採れますので作業に手数を要しますが、それを切って苗木を植えれば、収穫できるまで数年かかりますので、その間作業が軽減できます。ただ成木を省力化のみを目的に切るのは心理的な抵抗があるため、形質的に劣っている木や老木を植え替えたり、栽培する品種を切り替えたりするなどを目的にすれば、未来への投資と解釈する事もできるため、受け入れられるのではないでしょうか。
 1反以上の単位でミカンの木を全て植え替えることは、こちらではしばしば行われています。商品が生産できるまで7〜8年かかるため、その間は「作業の執行猶予」となります。極論をいえば、果樹園面積の70%で改植を行えば、かなりの余裕がでてきますよね。
 10年近い年月が過ぎれば、事情が替わっているため、次の対策も立てられると思います。
-----------引用終り------------
 園主もこのプランにまったく同意します。改植の目的も大橋さんが指摘するとおり「園の若返り」「品種の再構成」「作業の執行猶予」の3つが挙げられます。林檎の場合、古木を、果実の着色の良い系統の苗木や、果実が大玉の系統の苗木で改植すれば、それだけで、園全体が若返るとともに、将来生産される品質も向上することになります。また、改植に当たって、現状では贈答林檎販売のために「ふじ」に偏重していた品種構成も見直し、8月下旬から12月まで、品種ごとの収穫時期がうまく分散するような構成に改めれば、仕事量が平準化でき、作業が集中しないというメリットが生まれます。
 そして改植の結果として生み出される「作業の執行猶予」。このモラトリアムの中で、特許事務所でのキャリアを積み、資格試験にパスすることを目指すわけです。園主が試験にパスする確率はそれこそ天文学的に険しい道なので、10年後を予測することはなかなか難しいのですが、10年後には何らかの見通しは出来ていることは確かです。ですから、その時に、その先の10年の戦略を練ればいいのでしょうね。いずれにしても、この「作業の執行猶予」がもたらす時間は、園主にとっては、大変に貴重なものとなるでしょう。

 ところで、メールの文章中に「ただ成木を省力化のみを目的に切るのは心理的な抵抗があるため」という表現があるのが、また、嬉しくなるほど同感です。間伐の際にも感じることですが、木を伐採するという作業は、木が可哀想で、精神的に辛いものですね。

-------------引用---------------------
2、間伐を進める
 妻の意見と重複しますが、安曇野地域の標準以上に間伐を行い(周囲の目が気になると思います)、木の密度を下げるのも有効な方法でしょう。伐採によって開いたスペースには、将来、充分な世話ができるようになったとき、改めて苗を植えればどうでしょうか。
-------------引用終り-----------------
 やはりこれが、一番即効性のある規模縮小の方法でしょうか。とにかく、一本おきに間伐すれば、作業量は単純に前年の1/2になるのですから。収穫量=収入も半分近く減少するというハードなデメリットをもたらすために、専業であればなかなか決断ができないプランですが、作業量とのトレードオフとして、兼業スタイルの今こそ実践するしかないでしょうね。
 大橋さんも前回の奥様の意見の解説の中で触れていますが、間伐により、林檎の木が密植状態から開放されて、果実が太陽の光を沢山浴びれるようになり、林檎果実の高品質生産に繋がるというメリットがあるというのも、見逃せません。

 間伐については、園主の中にも、「隣の他人の農地との境界に最も近い林檎の植樹列を伐採する」というプランがあります。前回紹介した「トラックが通れるように間伐する」という奥さんの発想とちょっと似ている気もします。
 具体的には、建物の建蔽率の考えと同じように、農地面積に対して林檎の植樹面積を一周り小さくするように周辺部を伐採するということです。これによるメリットは、隣接農地への農薬飛散を減少できるというものです。詳しく説明すると「果樹園は野菜畑とは異なり、作物(果実)が3次元的な空間の中で育っています。したがって、病害虫防除のための農薬散布も、地面に向って平面的に散布するのではなく、空間に向って3次元的に行わなければならず、どうしても隣接地への農薬の飛散が起きてしまっていました。しかし、林檎の建蔽率を小さくすることで、隣接地との空間が生まれるから、飛散が減るのではないか」というわけです。
 最近の無許可農薬の使用問題は、隣接他作物園からの農薬飛散問題、あるいは、隣接同作物同士の薬剤の2重散布の問題へも波及することが考えらますから、有効だと思うのです。

 「面積を減らさない規模縮小」=「作業量の削減」という視点から、大橋さんの提言は、さらにもう一つあります。ワクワクしながら、次回へ続く。
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