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Inside Farming Vol.105


農作業アウトソーシング(紀州から3)


  「面積を減らさない規模縮小」=「作業量の削減」は、一般的な農業経営でも直面する問題であるという視点から、和歌山でみかん農園を経営する大橋さんが提案を寄せて下さっています(大大大感謝)。前々回前回、そして今回と、その提言を紹介させて頂いています。前回までの提案内容は、第1に改植、第2に間伐というもので、園主にとっては直ぐに実践に移すべき重要な提案でした。そして今回は第3の提案です。

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3、期間従業員を確保する
 果樹栽培は農繁期が特定の月に限られていますので、従業員を通年採用するのは不経済です。とは言っても、農繁期だけ働いてもらうアルバイトを毎年募集し、毎年違った人に作業してもらうというのは、作業能率上好ましいことではありません。そこで山小屋の従業員みたいに毎年決まった人に決まった期間だけ働いてもらうという方式で従業員を雇用するのも一案だと思います。半年働き、あとの半年は海外で過ごしたりボランティア活動をしたりしたいという人も、信大あたりで探せば見つかります。ただ、この方式は、採算性がとれるか、あるいは売上が一定水準以下のばあい自腹を切る余裕がある、という前提でのみ成立しますが……。
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 そうなんです。結局、人間が一人でできる事に限界があることに気づけば、アウトソースに頼らざるを得ないのですから。我が園でも妻の両親に本格的に摘果作業を依頼するなど始めています(といっても、これは、家庭内労働力の利用の域を出ていませんが・・)。

 「期間従業員を確保する」という提案を、一般論に展開しますと、確かに、中小規模の農業では、「雇用」は人件費との兼ね合いで難しいのですが、もし現在、この先20年は農業専業でやっていこうとプランしている農業者であれば、大橋さんの提案する形態の雇用を受け入れる程度の規模や売上や体力は必要なのかもしれないと思います。また、農家が、そういう形態の雇用を、創出していかなければならないのではないか、とも思います。
 なぜなら、農業がこれだけ厳しい時代に突入すると、農家の淘汰が始まり(既に始っていますが)、廃業した農家が失業者となるのは目に見えています。農家の淘汰によって空いた土地と失業した人を、地域の中大規模農家がアウトソースとして利用する、という展開が、農村と地域の農業のためには良いような気がするからです。

 最後に大橋さんは、規模縮小にあたっては、何を優先すべきなのか明確にし、それ以外のものが引き起こす矛盾には目をつぶる、という基本姿勢、ポリシーが必要である点にも言及されていました。まさに、そのとおりですよね。規模縮小とは、「時間をとるか、仕事をとるか」、「収入をとるか、作業量の削減をとるのか」という、二律背反の選択肢を選ぶことの連続ですから、ポリシーが決まっていないと決断は揺らいでしまいます。

 大橋さんと奥さんが下さった「面積を減らさない規模縮小」=「作業量の削減」は、なるほど、なるほど、と頷く提案ばかりでした。感謝感謝です。そして、園主は、ここ2、3年で、その全てを取り入れながら実践したいと思います。ありがとうございました。
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