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Inside Farming Vol.102


兼業スタイルの問題点


 園主は果樹園の規模の縮小(作業量の削減)に取組んでいる。専業の頃は規模の縮小なんて考えもしなかった、というよりも、規模拡大のために僅か前年前に新たに農地を取得したばかりである。しかし、兼業スタイルにより農業に従事する時間が減ってしまうのだから、規模縮小は必然的な流れである。

 このような積極的な規模縮小を考えはじめたのは、昨年の反省による。

 昨年は、初めて兼業スタイルで農業をやった一年であった。初めて尽くしだから、日々の生活の中で農業にどのくらいの時間が割けるのかを的確に把握できず、果樹園の管理が不十分で病害虫を発生させてしまったり、今までと同じ仕事をこなそうとして体調を崩して、病院に担ぎ込まれたりしたのであった(2001年の近況参照)。つまり、「時間が無い>管理ができない>体調を崩す>さらに管理ができない>低品質生産」という全く悪い循環に陥っていた。
 また、それまでは経営の柱であった贈答林檎の販売を、年の初めから中止するつもりであったために「お客様のためにいい林檎を生産しよう」とする意識が当初から欠如していた。加えて、雹被害の後に心に刻まれた農業への失望感から、農業を積極的にするという意欲がなかった。そう思って振り返ると、林檎は正直なものだ。農業に対する精神的な不誠実さが、果樹園に表れた。確かに、「雹被害で作った農業資材費と生活費の借金」の返済のためだけに農業をやっていたのでは、そりゃだめだってもんだ。

 今年になって、農業に対するメンタル的な思考は、時間の経過とともに、また、お客様からの手紙やメールによる励ましにより、徐々にではあるが改善されつつある。そんな、心の回復が、本当に僅かな箱数だけれど、贈答林檎の販売の再開につながった。昨年の園主の気持ちから考えたら相当大きな変化だともいえる。
 そんな心の回復の一方で、兼業スタイルによる農業への就労時間の制約は解決するどころか逆に厳しくなっている。特許事務所の仕事に慣れてきて仕事の責任が増したて来たこと、また、資格の受験勉強が本格化してきた事がその理由だ。これって、ひょっとして、「二兎追うものは・・」状態?なんとかしなければ!!。そんな気持ちが「規模縮小」の決断を迫った。

 規模縮小によって「作業量の軽減>管理ができる>体に過剰な負担がかからない>心に余裕もある>高品質生産」という好循環へ一挙に転換しなくてはならない。しかし、「規模縮小」のために、いきなり果樹園の土地を他人に売買したり、新たな耕作者に果樹園を任せることは、農業者としての自負心がなかなか許さないものである。耕作面積はそのままで「規模を縮小」するという方法はないものか。一番の課題は、実は、その点であるのだ。(続く)。
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