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Inside Farming Vol.50 (Japanese)



雹の被害で林檎は全滅だー!

 7月4日、5日(2000年)の2日にわたり河合果樹園のある長野県東筑摩郡波田町では雹が降りました。4日には”お弾き”から”ビー玉”くらいの大きさののもが10分程度、5日にはなんと”ゴルフボール”くらいの大きさのものが30分くらい降りました。特に5日の雹はすごいもので、まるで雪が積もるように地面が真っ白になりました。窓ガラスが割れる、プラスチック波トタンに穴があくという被害も多発しました。また雹が降るときは集中豪雨も付き物で、土砂や水が浸水する災害も随所で起こりました。雹の当たった林檎-7月6日(翌日)朝

 そんな雹の中、林檎は・・・・?我が果樹園の林檎は全滅です(波田町の林檎全体の45%が壊滅的な被害をうけたそうです)。果実はボコボコに傷つき見る影もありません(左は翌日の写真)。林檎の木の葉っぱも雹が当たったために、ちぎれてチリチリになってます。ゴルフボールが空から何万個と落ちてくることを想像してみて下さい。外にいて人間がケガをしなかっただけまだマシだと思うほどの状況なのです。

雹の被害を受けたスイカ 被害は林檎だけではありません。波田町はスイカの高級ブランドとして県内外に有名な”下原スイカ”、”JA松本ハイランドスイカ”の中心的な産地なのですが、あと一週間で収穫が始まるそのスイカも壊滅的な被害を受けています(波田町のスイカの90%以上に被害が出たそうです)。波田町のスイカは県内のテレビ局が毎年初出荷を県内の歳時記の一つとして取り上げるほどの知名度があるために、今回の雹の被害はその直後から各地方局テレビ番組で大きく取り上げられました(スイカと同様に被害を受けた林檎はほとんど全くTVでは取り上げられませんでした。確かに、話題性、被害総額、被害面積などはスイカの方が大きいかもしれません。でも被害状況は林檎も全く同じなのです。まあマスコミに過大な期待はしていませんが・・どの局も同じ視点だけで報道するのはちょっと悲しいですね)。
 写真は河合果樹園に隣接するスイカ畑の雹の翌日の様子です。スイカの茎、葉は雹の為に折られたり、破けたりしてスイカが丸見えになってしまいました。翌日には全体が枯れはじめています。スイカ生産者の方は”あともう少しで収穫だった”という無念さもあって、精神的なダメージは私達林檎生産者よりも大きいかもしれません。私はそんなスイカ生産者の気持ちを考えると泣けてきました。なぜなら、台風で収穫直前に大被害を受けた1998年の気持ちを思い出したからです。

雹に当たった林檎 4日後  さて、林檎の被害ですが、こちらも相当なものです。県内マスコミの”スイカ被害偏重報道”のせいと、雹というものがあまりに限定された狭い局地に集中した被害を出すせいで、ちょっと地理的に離れた一般の方の林檎の被害に対する関心はほとんど無いような状態なのですが、現実は悲惨といってもよいでしょう。

 林檎の果実についた傷は、単なる打撲による傷だけではなく、打撲で破裂したような状態になっているものが大半です。そのためにだんだん腐りはじめています。さらに悪いことには、林檎の葉にも雹が当たって、チリチリにちぎれているために、林檎の木は光合成による養分の製造が十分にできなくなってしまっています。その結果、葉が健全な状態の半分程度の量になってしまった”つがる””芳明””ジョナゴールド”などは木になっている全ての果実を摘果することになりました。”ふじ”は樹勢によって7,8割から全量の摘果しなくてはなりません(”樹勢”による摘果はちょっと専門的な表現です。本来は全量摘果の被害ですが、来年以降の木の健康状態を考えながら”樹の勢い”によって果実の量を調節するのという事です)。こうしないと、来年以降、木が疲れ、弱ってしまい林檎が生産できなくなってしまうかもしれないというのです。
 もちろん、林檎は収穫できないにも関わらず、林檎と林檎の木に今後病気が蔓延しないように、継続的に農薬を散雹の被害一週間後布することも必要になっています。雹のあと4日目の写真(左側)一週間後(右側)を見て下さい。打撲したところの色が変わり始めていますね。ここから腐ったり、病気が発生することが懸念されます。そして上部の枝の部分に注目してみてください。枝の皮が剥けています。もちろん雹の被害です。雹で枝や幹にも傷がついているのです。幹などにできた大きな傷は病気になりやすいので、そこに傷薬を塗るという作業も必要になってきます(そこまで手が回るかどうかわかりませんが)。

 さらに潜在的な被害として来年の果実の元になる”花芽の破壊”が考えられています。この”花芽”というものは7月から8月に形成されてくるのですが、そこが雹で物理的に破壊されている可能性が大きいのです。さらにさらにその花芽が開花して果実になるための初期段階の成長に使われる養分は、前年(つまり今年の)8月以降に光合成などで木に蓄えられた養分が使われるので、木に葉がない場合は、その貯蔵養分が不足して、健全な果実が育たない可能性もあるというのです。スイカや野菜などと異なり、被害の影響が翌年、翌々年まで出ると考えられているほど、重大な被害なのです。

 5年ほど前にも雹が降り、被害に遭った事があります。その時「雹が降ったのは20年ぶり」だと騒がれました。しかし、その記憶も消えぬ今年、もう雹の被害に遭っています。他にも、一昨年は台風被害。昨年は秋の異常高温による果実の品質低下の被害など、最近は気象による被害を受けつづけています。こうなると、来年また、雹や台風の被害を受け、壊滅的な打撃を受ける可能性も否定できなくなってきます。というよりも、毎年気象災害を受けること前提に農業をしていかなくてはならないということでしょう。そんな将来に対する不安が、被害農家全ての肩や背中にズシッと圧し掛かっています。
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写真、本文とも Copyright(C) 河合果樹園