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Inside Farming Vol.84



温暖化が農業に与える影響〜紀州からの便り〜<その1>


 園主はInside Farmingや近況の欄で、ほぼ毎年、異常気象や温暖化が林檎栽培に与える影響に言及しています。今回は、これらを読んでくださった和歌山県でみかん果樹園を経営されている方が、みかん栽培における温暖化の影響についてメールを下さいました。(メール掲載の快諾を頂きました。ほぼ原文に近い形で公表させていただきます。ありがとうございます)。

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 はじめまして。この数年を振り返って、私も、気象の変化を身を持って感じます。我が家のみかん果樹園は標高20メートルの平地から同350メートルの段々畑まで約10個所に分かれて分布しています。4年ほど前は標高の低い園地ではよい品質の果実がなり、高所では酸度が高いものしか出来ませんでした。しかしこの2、3年の高温下では、低地では浮皮が発生して品質が低下する半面、管理に手間がかかるため耕作放棄しようと思っていた高所では平均気温が高くなったため、よい品質のものができるようになりました。

 平均気温が高い平地での栽培が難しくなるのなら、高所での栽培にシフトしたり、高温に適応できる品種(晩生の品種、現在、海岸線沿いで栽培されている)に切り替えたりという手段も残されていますが、採算を考えるとあまり現実的ではありません。高所では収穫量は平地の半分なのに、傾斜が急な土地であるために労力は2、3倍かかります。つまり、このまま温暖化がすすむと、大部分を占める低地の果樹園が耕作不適格地となり、農業で生計を立てるのは困難になるでしょう。晩生品種への転換も、果実の品質に問題があったり、苗木を植えても成木になるまで15〜20年かかるなどの問題点があったりして、いろんな意味で難しいのが現状です。

 周辺では、ビニールハウス内でみかんを栽培するハウス栽培も盛んですが、暑かった昨年は、需要のピークを迎えるお盆前後にみかんが着色せず、出荷のタイミングを逃して損をした農家もかなりいました。通常、ハウス栽培では、出荷予定時期の20〜30日前にビニールをはずし、果実を外気にさらすことで果実の着色を促進させます。しかし高温が続くときれいな橙色が発色せず、緑色が抜けて白っぽくなってしまうのです。昨夏はまさにその状態でした。7月末から8月中旬、お中元商戦で最も需要が高まる時期に出荷すべく栽培したのに、白っぽいミカンになってしまった、あるいは橙色に発色した時期が需要が低迷して価格が下落する8月下旬以降にずれこんだというケースも多数見られました。
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 園主も昨年Inside Farming68で「今年の夏は平年よりも平均気温が2度高いといわれているから、愛知県あたりで林檎を栽培しているのに近い状態となっている。長野県=林檎という農産物の適地適作という条件は今年は崩壊してしまった」と書いています。農業にたずさわる人々の現場では、温暖化は"実感する"レベルを通り越してもう"死活問題"になってきているのだとあらためて感じました。

 2002年3月。松本の平均気温は6.4℃でした。平年は3.5℃といいますから平均で3℃も気温が上昇しています。平年より10日以上早い3月中に桜が咲き始め、4月上旬にはもう散っています。今年もすごいことになってきました。

(p.s.アメリカは京都プロトコルの批准をお願いします)
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