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Inside Farming Vol.68 (Japanese)



異常気象に天候デリバティブ

   さて、毎年毎年、異常気象といい続けてはや何年になるだろうか。また異常気象かと、読まれる方も飽き飽きしているかもしれない。でも、取り上げちゃう。今年は気象に全く関心の無い人でさえも否応なしに異常高温、異常乾燥を実感しているだろうからだ。報道によると30度以上に気温が上がる日は10年前の20倍!に増えたそうだ。
 
 河合果樹園のある長野県中部地方も7月からずーっと最高気温は34度前後(東京よりも高いかも)。雨は殆ど降らないといった農業泣かせの気候が続いている。県内で報道されているこの気候による農業被害は、今が(8月中旬)収穫時期である加工用トマトが水不足のため果実が肥大せず収穫量が激減しているというものや、レタスの葉がボール状に丸くならずに真直ぐに伸びてしまって商品にならないというものがあるが、実際は報道されない広範囲の作物にも被害が出ていると思われる。乾燥に強いと言われている林檎だってこれだけ雨が降らなければ害虫の多発とか、予期せぬ病気の発生とか、肥大不足とか、果実が過度に熟してしまうとか、影響が出ないわけがなく、本当に本当に頭が痛い。
 総合的に今年の夏は平年よりも平均気温が2度高いといわれているから、愛知県あたりで林檎を栽培しているのに近い状態となっている。長野県=林檎という農産物の適地適作という条件は今年は崩壊してしまった。

 猛暑で悪い影響が出る産業があれば、クーラーや清涼飲料水などの猛暑特需の産業だってあるから猛暑が全て悪いとは言い切れないが、気象条件が毎年これほど乱高下してしまうと安定した農業経営は本当に難しいと言わざるを得ない。これほどの乱高下を折込済みの経営はどうやっても不可能だ。
 
 これって、別に農業に限ったことではないだろうなあ・・と思っていたら、新聞(日経8/14)に天候デリバティブの話が出ていた。−−デリバティブ(金融派生商品)ってなんだ?といわれれば(数年前に金融デリバティブとコンピュータシステムについて取材をしていた友人の"優秀な"記者が「デリバティブは難しい」と言っていたのを思い出したので、私は既に理解することを放棄しているのだが・・)私の中では一応、変動する指標に対して投機する金融商品をいうとオボロゲに捉えている(そういえばポールマッカートニーが「OASISはBeatlesのデリバティブだ」と言っていたのも思い出したが、これは金融デリバティプとは関係ないですね)。--
 
 要は、ビヤホールとかゴルフ場とか遊園地、観光施設、アパレルなどの猛暑や冷夏、大雪や長雨に売上が大きく左右される業界で、初めに一定のお金(オプション料)を払っておけば、異常気象の場合(気温や降水量で条件設定された指標を超えた時)に補償金が受取れるという金融商品のようである。保険と似ているが損失額を査定しない点が異なる(ここがポイントだと思うが)。
 契約例も新聞に載っていたから見てみよう。ビヤホールの例ではオプション料1690万円で、補償金支払い条件は7〜8月に10mm以上の雨が降るか、31度以下になる日が36日以上あった場合、1日500万円が支払われる、というもの。地域や場所や企業の規模によっていろいろな条件設定の商品があるのだろうが、なかなか微妙な設定(これをコンピュータで設計するのだ)がキモだろう。

 新聞は今後、数100万円台の小口のオプション料の商品が中小企業にも浸透し急速に市場が拡大するとの見方だという。つまりは、どんな産業も異常気象対策が課題になって来ているってことなんだろうなあ。
 と、書いていたら、超大型の台風11号が上陸しそうですね。イヤハヤ・ナントモ・ドウシタモンデショウ。

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