東洋医学
潰瘍性大腸炎(Ulcerative colitis:通称 UC),過敏性腸症候群(Irritable Bowel Syndrome:通称 IBS)の治療方法
(6)筆者の考える潰瘍性大腸炎,IBS, UCの炎症原因(仮説)
●潰瘍性大腸炎, UCの炎症原因について、筆者は次のように考える。潰瘍性大腸炎,UCの真の原因(=本)は、腎陽虚(後述する)である。腎陽虚から潰瘍性大腸炎,UCの発症に至る原因には、二つのルートが考えられる。
@生来、腎陽虚に生まれついており、幼少時より腹痛下痢(小腸性ではない)が年に何度か起きてはいるものの、大過なく日常生活を続けていた人に、あるとき、大小は問わないが何かの原因(自分ではその理由が分からないこともある、要するに腎陽虚が進み、体が耐え切れなくなっているのである)で、自律神経の乱れが生じて、猛烈な大腸性下痢症状(これは熱性症状、あるいは身体内部の寒性症状が強すぎて、相対的に加熱命令が強すぎる熱性症状?)が生じる。このことが引き金になって、潜在化していた腎陽虚に伴う大腸の陽虚が顕在化し、慢性の潰瘍性大腸炎、UC症状に到る。
A生来、腎陽虚には生まれついておらず、下痢症状には無縁だった人に、あるとき、何かの原因で大きな自律神経の乱れが生じて猛烈な大腸性下痢症状(これは熱性症状)が生じる。通常このような急性の下痢は、医学上の処置が適切であれば、1、2週間で症状が治まるものであるが、その自律神経の乱れの原因が人生の進路、社会生存に関係するような大きな問題(戦争、政治上の紛争、経済、経営上の大問題、事故等の大きなトラブル、重大で長期間の仕事、研究・修行中の難題出現、失業、進学の失敗、失恋、死別、夫婦・親子不和等)ですぐには解決できない場合、その人は長いこと悩み続けることになる。そうすると、下痢が長引き、下痢自体が大腸を痛め、大腸炎が慢性化して大腸虚寒から腎陽虚に到り、潰瘍性大腸炎、UCとなる。(この部分は仮説である。次節の●残る課題を参照のこと)
腎陽虚の状態にまで至れば、大腸をいくら治療しても(補気剤、化痰利水剤や固渋剤、清熱剤を使用しても)、潰瘍性大腸炎、UCを治すことはできない。
●長期間に渡り、腎陽虚の人、あるいは腎陽虚に到った人の陰窩(インカ)は、萎縮(通常のサイズの1/2〜1/3)し、陰窩開口部は狭窄する。それに伴い、その中に本来含まれるはずの杯細胞は減少し、また小型化する。そのため大腸粘液が十分に蓄えられなく、粘液分泌量は少なくなっている。杯細胞は陰窩以外の自由表面にも存在しているが、陰窩内部の杯細胞が健全である場合には自由表面上の杯細胞は働かないが、陰窩内部の杯細胞が不活発になると、その代償作用として自由表面上の杯細胞が活性化するように人体はできている。何故なら、自律神経の緊張による各部位器官の急性熱性症状は、病原菌や外敵の来襲、不慮の事故などが存在する限り、時々起きるものであり、その度に便通が異常になることは、生命の危険を伴うからである。
●自由表面上の杯細胞は、増加はするものの密集してはいないので、個々の杯細胞は肥大化して球状になり自由表面上に膨隆する。杯細胞の内部は粘液顆粒で満ち溢れる。自由表面上の杯細胞は粘液の貯留倉庫を持たないから、粘液の噴出は動的、継続的になり、便を運ぶには自律神経のコントロールが効かない(絶えず粘液を生産する)状態となる。さらに、余分な粘液を吸収調節する機能を持つ自由表面上の吸収細胞の存在する場が少なくなっており、吸収細胞がほとんど働けない状況となっているので、便は固形化されることができず、便は鶩泄(ぼくせつ、あひるの糞のような軟便)、又は粘液交じり便となる。この状態は、生命維持のために自律的に起きているので、次の便が送られてくる度に、排便作用が起き、便が尽きるまで続く。なお、小腸までは健全であれば、栄養不足にはならないから、見かけ健康そうに見えて、他人から(家族からも)はその苦しみを理解されない。
●[仮説1]やがて、大腸自由表面上皮(1層)には、肥大化した杯細胞と便との接触摩擦などにより、上皮細胞の自由表面には水泡(湿疹)が生じて、そこから雑菌(大腸菌)が入り、雑菌の排除のために、上皮は熱を持ち(毛細血管の充血と拡張)、かつ、リンパ球が増加する。雑菌と免疫系との抗争が長引けば、上皮は潰瘍化する。免疫系の活動を抑制しても、本への措置ではないので、症状はますます悪化するばかりである。[仮説2]消化管上皮細胞の動的平衡状態の原理により、陰窩の中で分裂した上皮細胞は、徐々に外側へ移動して、大腸全体の繊毛を覆う覆う上皮(1層)となる。潰瘍性大腸炎、UC症状を有する腎陽虚の大腸は、上皮細胞全体の衰微性のために自由表面上皮(1層)の構造そのものが粗い(アトピー性皮膚炎の角層隙間と同じ)。その隙間から雑菌が大腸内に進入し、雑菌の排除のために、・・・(以下上記に同じ)。
●この悪い状態の均衡(細胞自身は自体生命を維持するために、この状況を必死に保っている)を破るには、本を正常に持っていく、即ち陰窩内部の杯細胞の存在状態を本来の正常な形にもっていくことが必要であり、本が健全になれば、標(自由表面上の杯細胞の代償作用)は自ずとその役割を終えて消えていく。
2011年10月10日発表
(c) Dec. 2003, Yuichiro Hayashi