東洋医学

潰瘍性大腸炎(Ulcerative colitis:通称 UC),過敏性腸症候群(Irritable Bowel Syndrome:通称 IBS)の治療方法

まえがき

標記患者数については,各種ウエブサイトで発表されているとおりであり,IBSの有病率は概ね一般人口の10-15%、UCの患者数は10万人当たり10人〜15人程度とされ,先進国における有病率は世界的に年々増加している。発病の原因がはっきりせず,全治に至る有効な治療方法が見つかっていないので,患者の悩みは深刻である。最後に大腸除去しか方法がないとなれば悲惨である。

本章は、筆者自身が罹病した標記病症に関する自己治療の経緯を記したものである。本章に関する記述内容に関し、他人が治療の参考にすることは自由であるが、筆者は、本記事によって生じる如何なる出来事についても一切の責任を負うものではないことを強調しておく。くれぐれも素人治療はしないように、東洋医学を修めた医師、薬剤師、針灸師に相談し、治療してもらうことを薦める

筆者は、医学を学んだことはないし、東洋医学もUCの自己治療のために独学で学んだだけである。但し、自己の身体を試験体として、40数年間、自己治療に関係する各種生薬の効果を調べてきた。本文の中には、専門家から見れば、専門用語の誤りや学問上の誤りも見受けられると思われるので、大きな誤りがあればmailにて指摘していただきたい。

注意:その後TV番組で、潰瘍性大腸炎症状(毎日頻繁な下痢症状が何十年も続くプロスポーツ者)の患者を何組かの専門医が診たてていたが、専門医(現代医学)の治療法に関しては、筆者は?であると感じた。ただ、潰瘍性大腸炎という用語は、その病症の定義を全て満たす患者に対してのみ使われるようであり、それ以外は過敏性腸症候群というらしい。多分、潰瘍性大腸炎症状に到った患者でも、それ以前の症状は過敏性腸症候群を経過しているはずだと筆者は考える。その意味で、本文は、筆者自身の症状も含めて、過敏性腸症候群対象患者と読み替えてもらってよい。朝から腹痛し、日に何回かの大腸性下痢が2〜3年続いている人に(冷え性、常に大腸不快感、背中が常に苦しい)、筆者四神丸加減+白朮+茯苓(多め)+黄連僅か+熟地黄(ごく僅か:血虚気味なので燥性を和らげる)処方1日で効果があった。それ以上は続けないことにして、又症状が出たら同じ処方を1日だけ飲むようにと伝えた。このような症状は、急性の腎陽虚による大腸虚寒症状である。病歴2〜3年でも急性であるから、腎気不足が進んだ末の腎陽虚症状としては、舌診に現れない。職場や学校場におけるストレスなどとは関係ない。何故、過敏性腸症候群対象患者が最近急激に増えているのかは、はっきりとは分からないが、冷房(学校時代を含む)や冷菓子、冷飲料などの冷食も関係しているのではなかろうか。

(1)筆者のIBS,UC病症と治療歴

筆者の病症歴 筆者は,幼少時より生来冷え性であり,中学生の始めくらいから下痢症であり,時折今に言うIBSの症状が出た。大学院生の頃,勉強一途の中で自分の将来について悩むことがあり,あるとき突発性不安神経症が起こり,そのとき猛烈な下痢症状となった。急激症状は納まりつつも,それ以来慢性的なIBS症状となり,それが進行してUC症状となった。もちろん,その過程で医者の診断を受けたが,心の持ち方などといわれ,有効な治療はなされなかった。針灸にも通ったが何の効果もなかった。これが45年〜40年前のことである。

病気を治す方法が世の中に無いのなら独学自己治療するしかない。その頃から,大塚敬節著「漢方治療の実際」,矢数道明著「漢方処方解説」,「傷寒論講義」,「漢方後世要方解説」,矢数格著「矢数一貫堂医学」、稲葉文礼・和久田寅叔虎著「腹證奇覧全」,その他各種の漢方書、針灸関係の大著を読み,処方を探し続けたが症状に該当する項目はなかった。その中で,薬局の見解を聞きながら、売薬処方(五苓散,苓桂朮甘湯,真武湯,各種和解剤など)を続けていた。その頃は,就職している中で転勤を繰り返していたので,生薬を手に入れる手段もなかったし,漢方医の診断を受ける機会もなかった。

筆者はおよそ30年前に郷里に帰ったが,多分その少し前に神戸中医学研究会から「中医学入門」,「中医処方解説」,「漢薬の臨床応用」シリーズが出版された。筆者が探していたものはこれであると思った。幸いにも,郷里には生薬を扱う薬局があり,その店主が「エビスヤ薬局」の小池富二夫氏であった。小池富二夫氏は日本漢方ではない中医学を既に修めておられ,各種の蔵書があった。その中で,中医臨床体系シリーズ(雄渾社),温病編他なども読むことができ,その他多数の文献をコピーできた。この時点から筆者による生薬処方による本格的な自己治療が始まった。

小池富二夫氏からは,要所要所で見解を伺い自己処方の参考とした。30年近くの中で,近親者に対してのみ,且つ医院治療や売薬では無効であった時にのみ,自己生薬処方によって治療を試み,ある程度の成果をあげた。なお,現在に至る購入した東洋医学関係の書物は,雑誌,各種文献コピ−を除き,針灸関係,医学史,五行論関係を含め100冊弱となっており,筆者の薬棚には現在150種類程度の生薬がある(もちろん,筆者と筆者近親者の病症用生薬のみしか購入していない)。

●一番UC症状が重かったときの症候

舌診:[舌象]舌色紅,舌体胖大,辺部歯痕,全体に水滑(常にあふれるように唾が出る),根部微黄膩苔,下痢は数回前後(下痢が続いて止まらなくなったこともある),粘液便,時折血液混じり便(最近の大腸がん検診によると、過去に大腸が癒着した痕跡があるとのこと),鶩泄(ぼくせつ,あひるの糞のような軟便,鶩泄は寒湿の証に属し,大腸に寒があることによって生ずる(中国漢方医語辞典,樺国漢方)),夜中の3時頃に必ず心臓動悸して目を覚ます。その時刻に下痢をするような夢を見ることがあるが下痢になったことはない。声は大きくはっきりしており,酒もそれなりに飲み,仕事は猛烈にしているので,外面からは(多分)病気で苦しんでいるようには見えないだろう。体格も普通で運動もそれなりにできる。幼少時より夜中に1回は小便(夜中の3時頃に起きる,尿清澄,日中頻尿。[脈診]脈拍数,若いときより,60/分。右寸関-浮沈とも-洪(山下訽,脈診入門p.68によれば,大腸虚証),右寸-浮-微,右沈弱,左は全て浮沈とも無力,特に左寸浮沈-微(脈が取れないほど)。臍傍の動悸が非常に強い。

両膝関節寒痛(若いときRunningで痛めた)。脚の脱力感,背中が常に気持ちが悪く苦しい,足元が冷えると常に下痢をする。寒暖が入り混じる季節の変わり目では,風邪状(熱は出ないが鼻がぐづつき,体がだるい)になる。本物の風邪では熱は余り出ず,具合が悪い症状が長引く。

●IBS,UCの治療経緯1 突発的な不安神経症に伴い,猛烈な大腸性下痢が生じ,医師の処方が無効であったことは記述した。猛烈な下痢は(半年〜1年くらい?詳しくは忘れた)多少治まったものの,その後慢性的なIBS,UC症状に進んでゆき年々ひどくなっていった。もちろん血便もあった。

中医処方解説だけではなく、漢方医学大辞典・薬方編(人民衛生出版社、雄渾社)、症状による中医診断と治療(燎原書店)、実用中医内科学(上海科学技術出版社、東洋医学国際研究財団)、各種コピー文献の関係処方を全て調べ、その他に、中医臨床の記事を23年間毎回探し,応用できるものは全て試したが効く処方はなかった。

売薬,自己処方剤を含めた30年近くの治験は次の通りである。・あらゆる脾胃補気剤,化痰利水剤が無効である。特に人参の使用は少量でも症状を悪化させる。・あらゆる補腎陽剤(四神丸や真人養臓湯を含む)が無効である。特に熟・生地黄(蒼朮、縮砂などを加えても)の使用は少量でも症状を悪化させる。・あらゆる補血剤が無効である。特に当帰,熟地黄の使用は少量でも症状を悪化させる。・あらゆる固渋薬を含んだ脾胃剤も無効である。清熱利湿剤(中医臨床体系,温病学),和化剤(神経性ということで試みた),熄風剤(誤治により痰火動風を経験した)が無効である。

●IBS,UCの治療経緯2 UC症状が進んでいく中で,十数年前には,真夜中に突然の心臓動悸が強く起きるようになった。この時の誤治(全責任は筆者にあるので原因は記述できない)により痰火動風が生じ,突発的な頭鳴(頭鳴はなかなか直らず今も続いている),眩暈(回転性で無いゆれ)となった。この時より,痰火動風を鎮めるために温胆湯可黄連や導痰湯などを処方し,祛湿熱剤等を併用していた(他の処方は無効なので)。この処方が7,8年も続いただろうか。温胆湯や導痰湯は燥性が強いので,長く続けると,悪夢(誰かに追いかけられて必死に逃げるような夢)をみるようになったり,淋しい気分になったりする。このような状況の中で,五行図を基に,毎日,毎晩考えた。何故,UCに効く処方が無いのだろうか?

全ての処方は試みたが効かないという中で,唯一点に処方がしぼられた。これだけ各種の処方を毎日続けている中で,処方がUCや痰火に効かないのは,生来の自己体質がUCや痰火症状に大きく影響しているのではないか?それなら,UCの原因は脾虚生痰生湿,痰火・血虚動風、大腸虚症よるものではなく、腎陽虚だけによるのではないか。しかしながら,腎陽虚の処方は右帰丸(祛地黄)や四神丸(補骨脂は過去に既に一袋も使っている)を中心にして過去に色々試しているが無効であった。ここで,次のような作戦を立てた。@四神丸の処方構成をもう一度見直し強力にする。そのため補腎陽薬に対しては少しでも滋陰性のある生薬は避け,燥性又は非滋陰性の補腎陽薬を追加する。A補腎陽剤は痰火に対しては熱を生じさせて悪化させるようなので,適宜,温胆湯加黄連加減を中心とした利水・清熱剤で清熱する(四神丸との合方はしない)。

●四神丸の構成:五更瀉(夜明け前の腹痛を伴う下痢,それ以降は特に著変はないとされる),慢性大腸炎,久瀉,腹痛肢冷等を治す。

@補骨脂(破故紙),五味子,肉豆蒄,呉茱茰,大棗,生姜(校注婦人良方,漢方医学大辞典・薬方篇,中医処方解説)

A補骨脂,茴香,肉豆蒄,木香,大棗,生姜(景岳全書・古方八陣,漢方医学大辞典・薬方篇,中医処方解説)

●四神丸加味の運用による久瀉の治療

標記については,「実用中医科学」,上海科学技術出版社,財東洋医学国際研究財団,p.567-568が参考になるので紹介する。

秦氏は,命門火衰によって脾陽が湿を転化することができず,夜明けに腹鳴腹痛,水性便を瀉下して下肢は畏寒、腹部の冷え,脈象は沈細無力などの症状を呈する五更泄瀉には,温腎厚腸を以って治療すべきであるといっている。処方は,肉豆蒄・補骨脂・五味子・呉茱茰・山薬・白扁豆・茯苓・炮姜である。久瀉して止まらないものには,この方法に固渋法を結合させて,訶子・石榴皮・赤石脂・禹余粮を加える。

趙氏は,五更瀉で足が冷え腹痛するものは,四神丸に人参・沈香を加え,更に甚だしいものには附子・蜀椒を加えると主張している。

唐氏は,慢性泄瀉について前人のいう「浅き者は脾にあり,深き者は腎にあり」という論点に賛同している。治療には温腎健脾を主張し,併せて四神丸を基礎とした四君子湯と山薬・鶏内金を加えて中気を補い,脾胃を強健にすることで治療効果を高める必要があると主張している。彼は,更に腎陽虚に偏するものに対しては附子・肉桂を加え,脾陽虚に偏するものには乾姜・桂枝を,湿盛に偏しているものには藿香・佩蘭あるいは猪苓・沢瀉・蒼朮・薏苡仁を,気滞に偏するものは陳皮・木香を加え,滑泄して止まないものには黄耆・升麻を加えている。

五更瀉20例の治療効果は,16例が完治,4例に著効があったという。

●同上文献における急性泄瀉の治療

急性泄瀉には,藿香正気散,葛根黄芩黄連湯,痛瀉要方,胃苓湯を紹介している。筆者は,緊張したときに起きる軽い下痢には痛瀉要方(短期間の間)を,不安神経症を伴うような急性の猛烈な下痢には葛根黄芩黄連湯(短期間の間)を薦める。過湿気候や水分の多い食べ物のとり過ぎによる下痢には,藿香正気散か胃苓湯、柴苓湯の効く方を薦める(保和丸もよく効く)。筆者の家庭では,五苓散,藿香正気散,香蘇散を常備薬にしている。香蘇散は,肋間神経痛のようにピ-ンピ-ンと身体の各部で突如起きる針で突き刺すような痛みに頓服として用いる(香附子の代用)。藿香正気散(胃腸器官を乾かす)は、梅雨時や、盛夏時、季節の変わり目に発生する急性の腰痛(ぎっくり腰ではないけれども、ぎっくり腰になりかけの感じのような)に効く場合がある。腰痛薬として、補腎剤、補陽剤、利水剤、発散剤など各種あるが、なかなか効かない。一度藿香正気散を試してみるとよい。但し、藿香正気散は慢性腰痛を治すものではない。

●参考処方 除湿補気湯:柴胡3,升麻6,黄耆3,蒼朮4,藁本2,(当帰2),陳皮1.5,生甘草2,五味子1.5,黄柏3,知母2:漢方医学大辞典・薬方篇,人民衛正出版社,蒲Y渾社。両足が痺れて,沈重無力,汗が多くていつも笑い,口から涎をたらし,体が山のように重く,言葉を発せず,右の寸脈が洪大なものを治す。

●参考処方 乾地黄湯:熟地黄,鹿茸,巴戟天,枸杞子,丹参,五加皮,車前子,肉桂,防風:聖済総録,中医診断と治療,上巻,燎原書店。腎虚水泛の多唾。粘稠な唾液が多量に湧く・眩暈・動悸や息切れがあり,動くとさらにひどくなる・甚だしければ臍下の動悸・舌質は淡・舌苔は白滑・脈は弦滑

●IBS, UCの治療経緯3 右帰丸や四神丸は既に何度も試していて効果が無かったことは既に述べた。もう一度処方を組み立てる。本は生来の腎陽虚,それに伴い,四肢畏寒,頻尿,多唾,腎虚水泛,脚の脱力感。通常,腎陽虚では舌白滑,脈沈無力だが,本症状では舌紅,舌滑,根部微黄膩苔,右寸関洪,鶩泄。元々生来の腎陽虚であったところに、突発的な不安神経症に伴い、急性大腸湿熱となり,それが治まりきれないでいるうちに、大腸の炎症が慢性化した。右寸関洪は大腸虚寒を表すのに,舌は熱症を表していて解釈が難しい。大腸の炎症状態を示しているのだろうか、それとも湿熱、痰火を示しているのだろうか。

処方 @四神丸加味:◎補骨脂8-6(脾・腎経),◎巴戟天6(腎経),◎胡盧巴4(肝・腎経),○五味子4(肺・腎経),○肉豆蒄4(脾・胃・大腸経),○訶子4-6(肺・大腸経,渋腸止瀉),□木香0〜6(脾・大腸経,腸の止痛,大腸の蠕動促進),◇生姜6(肺・脾・胃経,消化),◇大棗8(脾経,鎮静,鎮痙)。補骨脂はこの処方の主薬であるが,燥性が強く一度に多量には用いない方がよいとなっているので,巴戟天と胡盧巴の適量(どのくらいの量が適量なのか筆者にも分からない)を補骨脂の加勢とした。大腸の渋腸作用を強めるために訶子を加えたのがポイントである。この処方は熱性が強いので、慎重に用いること。

A温胆湯加減:半夏6〜8,胆南星(自家製)6,竹筎(0),白朮6,茯苓6,生姜4,陳皮4,枳穀4,炙甘草2,黄連1〜3。黄連の量は大腸の熱症の程度によって日毎に変える。

●IBS, UCの治療経緯4

下痢がひどくなったときは,温胆湯加減だけにする。四神丸加味を2〜3日,温胆湯加減を1日のようなペ−スで続けたところ,2週間くらいで効果が現れてきていると自覚できた。1ケ月くらいで40〜50%程度、2ケ月くらいで60〜70%程度、3ケ月くらいで80〜90%程度よくなった。膝の寒痛も大分薄らいできた。もちろん,70年間の生来の腎陽虚が3ケ月で全快するわけではないが鶩泄,粘液便はほとんど消えた。なお,この間,腎陽補助剤として,莬絲子,杜仲,肉桂,肉蓯蓉なども試したが効果ははっきりしなかった。回復するにつれて、各薬剤を加減して減らしていく。

四神丸加味が効き始めた頃、実務引退したので自由時間ができ,近くの針灸治療所に行き,症状(大腸の件と冷え、膝関節痛、頭鳴など)を話して治療してもらった。なお,針灸理論については,筆者には語るほどの知見はないので触れないが,もしIBS,UCに確実に効く施術があるのであれば(原因が分かればきっとみつかると思う),現在IBS,UCは治療法のない難病とは言われてはいないだろう。

3ケ月後くらいで、調子の良い日(暖かい日)は,普通便2回。寒い日の寒冷刺激により大腸が痛み,普通便+少し軟便が合計3,4回。針灸治療も確実に効いたようである。針灸治療により腹部や肢が温かくなり,大腸の痛みが起きなくなるから,便意も起きなくなる。大腸に痛みを感じない(大腸の存在が無意識となる)というのは,IBS,UCを長く患っていた人間にとっては不思議な感覚である。従って,IBS, UCの症状には,突発的な急性下痢期を除けば,日常の生活程度(勤務を含む)における神経の緊張(ストレス、自律神経の乱れなどと言われている)はあまり関係ないと思われる。4ケ月目に入り、健康便、朝1日1回。眩暈、頭鳴は残る。寒い日は1日2回普通便。

追記(2012年10月)UC性状は100%完治。粘液便はない。但し、胃腸が弱いという体質は残っており、夏負けで下痢したり、食べすぎ、飲みすぎで下痢はする。この場合は、保和丸加葛根がよく効く。

治療経緯4は,現執筆時点(2011年9月中旬)の4ケ月以内の経緯である。何故今まで似たような処方を何回も続けていても無効であり,今回の処方は効果があったのだろうか。現在,この原稿を執筆するに当たって,中医臨床(東洋医学雑誌、東洋学術出版社)を調べ直してみた。IBS,UCの特集記事を含めて筆者が意を得たのは(針灸治療を除く),1999年3月号,pp.16−17,潰瘍性大腸炎,清水宏幸医師(仙台中医学研究会)の症例報告1件だけであった。東洋医学を修めた医師,薬剤師のおよそは,五更瀉には四神丸と知っている。しかしながら、四神丸(の原方)はUCの治療剤の一つとして紹介はされて各種テキストに載っているが、特効薬としては認知されていない。従って、東洋医学関係者の10%は自身のIBS,UCに四神丸を処方しても治らず,現在も苦しんでいるはずである。多分,超長期化した慢性のUCの治療法は、現在世界中(中国を含めて)に無いのだろう(特効薬のニュ−スを聞くが、長期治療薬のようである)。

2011年10月10日発表

(c) Dec. 2003, Yuichiro Hayashi