東洋医学

潰瘍性大腸炎(Ulcerative colitis:通称 UC),過敏性腸症候群(Irritable Bowel Syndrome:通称 IBS)の治療方法

(4)大腸ノ構造 

写真1は、「からだのサイエンス」、Newton別冊、2001年2月10日第10刷、p.15による。小腸と大腸の結合部。絨毛におおわれた小腸の粘膜(青色)から、腺におおわれた大腸の粘膜(黄色)に突然うつりかわっている。

写真1 小腸と大腸の結合部

写真2と写真3は、http://edu.icc.u-tokai.ac.jp/cos/3year/system/histology/histology/atlas/Gastrointestinal-system3/large-intestine.htmlによる。写真2の説明:大腸:粘膜固有層に腸腺が整列している。腸腺には杯細胞が多く、明るく見える。写真3の説明:大腸粘膜固有層の腸腺(横断)、腸腺は単一管状腺である。杯細胞が並び、粘液を分泌する。

写真2

写真3

下記記述は,各種インターネットウエブサイト,岩波生物学辞典による。

大腸粘膜(ちょうねんまく、英: Intestinal mucosa)は、腸壁の一部を形成し、機能解剖学的に機能に特化した一般の組織と少し異なった形状を有している。腸壁は4つの同軸状の層に分けられる。

A@粘膜上皮(Mucosa),AA粘膜固有層(血管,リンパ管が多い),AB粘膜筋層,AC粘膜下組織

A@上皮細胞(じょうひさいぼう)とは、体表面を覆う「表皮」、管腔臓器の粘膜を構成する「上皮(狭義)」、外分泌腺を構成する「腺房細胞」や内分泌腺を構成する「腺細胞」などを総称した細胞。大腸粘膜は,杯細胞(Goblet cell)と呼ばれる粘液分泌細胞や,多細胞性の粘液腺を持つ。

・上皮は機能的に以下のように分類できる。すべての上皮細胞は生理的に以下の複数の機能を担っている。

  1. 分泌上皮 - 粘液、酵素、ホルモンなど生物活性のある物質を産生し分泌する
  2. 吸収上皮 - 水、電解質、栄養源となる物質を能動的に吸収したり輸送する
  3. 導管上皮 - 管腔面を覆い物質の転送を促進する。
  4. 被覆上皮 - 表面を被覆し物理的または化学的なバリアを構成する。

また、形態によっても分類される。まず、細胞の並び方によって、次のように分類される。

  1. 単層上皮 - 細胞が基底膜上で一列に並んでいる。
  2. 多列上皮 - 細胞が基底膜上で数列に並んでいる。ただし、すべての細胞は突起をのばして基底膜に接触している。
  3. 重層上皮 - 細胞は基底膜上で重なりあうように何列(およそ10-30)にも並んでいる。

・大腸は、組織学的には、小腸とは腸絨毛の有無を主な相違点とし、発生の比較的後期に、いったん形成された腸絨毛が退化消失することによって大腸に分化する。これに伴って、機能も食物残渣からの水分の吸収粘液分泌が主なものとなる(岩波生物学辞典)。


・大腸の陰窩の長さは小腸の陰窩よりはるかに長い。


陰窩の壁と粘膜表面は吸収上皮細胞で覆われ、この細胞は表層で最も発達している。他に多数の杯細胞があり、これは陰窩の側壁にとくに多い

杯細胞は陰窩で特に多く、大腸の粘液分泌の盛んなことを示している。陰窩の上皮には基底顆粒細胞がかなり多数存在する。粘膜筋板は陰窩の下端に沿って走り、粘膜固有層と粘膜下層を境する。筋層は小腸より厚く発達している。ただし、結腸では外縦走筋は3本の結腸ひもに集結している。

大腸の吸収上皮細胞は小腸絨毛のそれと形は似るが線条縁の発達が悪い。この細胞が吸収するものは、大量の水と電解質(Na、K、Cl、重炭酸イオン)である。隣接細胞間の細胞間隙がしばしば広く開大し、水や電解質の大量輸送に好都合の形態と考えられる。食物繊維が腸内細菌によって分解されて生じる短鎖脂肪酸が大腸から栄養素として取り込まれる。(http://www.oralstudio.net/stepup/jisho/sakuin/E382BF/04981_12.php

腸の内腔には天文学的な数の細菌が常在菌としているにも関わらず、普段は何も起こりません。これは細菌がいる腸の内腔は体の外表面ではあっても、体表の皮膚と同様に粘膜が細菌の侵入を防いでいるおかげです。この粘膜の表面を覆っているのが1層の上皮細胞であり、これが基底膜という薄い膜の上に隙間なく並んでいます。腸粘膜の上皮細胞はバリアとしての働きの他、腸内腔からの諸物質の吸収、内腔への腸液の分泌をはじめ多くの働きをしています。

全身の粘膜面積は、テニスコートの広さの1.5倍という大きさですが、その内の80%を腸管が占めています。腸管の表面は厚い粘液層におおわれており、その粘着性によって、病原性微生物の侵入を拒む物理的バリアーになっています。・・・・・・今までの説明の「粘液層」の果たすバリアー機能は『自然免疫』でしたが、粘液層の下にある「上皮細胞層」では『獲得免疫』の機能が備わっています。
 
上皮細胞層には細胞の間に挟まれた様なかたちで、多くの『上皮細胞間リンパ球』が待ち構えています。この上皮細胞間リンパ球はT細胞の仲間です。ヘルパーT細胞(B細胞に抗体産生の指令を与える)が多く、直接に病原体を排除する細胞性免疫に係わるタイプ(Th1型)と、抗体を作って阻止するタイプ(Th2型)とが共存しており、合わせて腸管免疫を担っています。詳しくは、粘膜免疫、タマちゃんの暇つぶし、http://1tamachan.blog31.fc2.com/blog-entry-480.html)参照

消化管の表面を覆うのはわずか一層からなる細胞層で、これを消化管上皮細胞と呼んでいる。この上皮細胞層は身動きせずにそこにとどまっているわけではなく、常にからだの内側から外側へ移動している。この流れの一番外側に存在するのは、小腸であれば繊毛の突起の先端に位置する上皮細胞である。これとは反対、消化管の内容物のある側から見れば繊毛の付け根の奥に当たる部分に陰窩と呼ばれる洞穴のような構造がある。繊毛に存在する上皮細胞は分裂せず、陰窩の中を覆っている上皮細胞が分裂している。つまり、陰窩の中で分裂した上皮細胞は、徐々に外側へ移動して、繊毛を覆う上皮となり、最終的には繊毛先端から剥離するという運命を辿このような消化管上皮細胞の動的平衡状態は、我々が生存しているあいだ常に保たれており、この恒常性の破綻は、言うまでもなく感染症、癌、炎症等の様々な疾病の発症に関わっている。消化管上皮で覆われた粘膜内には多くの免疫系細胞が存在し、上皮細胞とのコミュニケーションを通じて粘膜の維持に寄与することが明らかになってきた。(食物繊維:消化管陰窩周囲における免疫系細胞の局在調節因子石塚 敏、北海道大学大学院農学研究科応用生命科学専攻)

(c) Dec. 2003, Yuichiro Hayashi