東洋医学

潰瘍性大腸炎(Ulcerative colitis:通称 UC),過敏性腸症候群(Irritable Bowel Syndrome:通称 IBS)の治療方法

(3)東洋医学治療法の簡単な紹介

50年以上の筆者の慢性のUCを治す方法が東洋医学にあった。このことを世に紹介するために本記事を執筆し始めたわけだが,これは偶然のなした仕業かもしれない。できれば,病因とその治療理論を構築して世に紹介したいと思い,インターネットでIBS,UCに関する現状(症状の観察と治療法)を調べ始めた。その中で,野上龍太郎,島田達生による文献を見つけた。この文献と現代治療法における治療薬剤の性質を考察することにより,筆者と症状が同じである限り,IBS,UCの原因とその治療法が見えてきた。

この治療法は,今のところ,東洋医学による診断と薬剤によってしか治癒させることができない。何故なら,現代医学には,その病症を記述することはできるものの,その治癒方法の概念が無いからである。もちろん,現代医学においても,東洋医学の知識は必要とせずに,筆者処方における各単生薬の有効成分を調べ上げ,その成分の病因に対する有効度を確認することで,IBS, UCの特効薬を作ることはできるはずである。針灸治療においても,現代医学における研究知見を参考にして,病因の論理を構築できれば,秘密的な手法ではない一般的な治療手法を提供できるはずである。

東洋医学には,病因を記述するに,八綱弁証という概念がある。八綱弁証とは,表・裏弁証,寒・熱弁証,虚・実弁証,陰・陽弁証がある。このうち,重要なのは,寒・熱弁証陰・陽弁証である。筆者は,とは,各種の生命活動の必要に応じて形造られた物質の集合(血液,内分泌液を含む器官)と捕らえている。とは,その物質集合の働き(作用)と捕らえている。例えば,神経細胞と細胞間物質,血液,輪郭を含む脳という臓器は陰であり,他の臓器に指示命令を与える働きは陽である。例えば,大腸を形作る杯細胞,吸収細胞,粘液,リンパ液を含む各種内分泌液は陰であり,雑菌を殺菌し,糞便を都合の良い時に,余分な水分は吸収して適度の硬さで外部に送り出す作用は陽である。陰は陽をもって働き、陽は陰があって存在する。どちらも、生命現象の主役である。

とは陰(物質)や陽(働き,作用)が弱く,乏しく,そのことが病因となっていること,とは陰(物質)や陽(働き,作用)が強く,有り余っていて,そのことが病因となっていることである。人間の普通程度の健康に不必要な,あるいは害を与える外部環境における陰・陽の存在と作用の実在もという。例えば,病原菌やがん細胞は実(邪実ともいう)であり,冷房,暖房,加湿,除湿もそれが健康を害するほどに過度であれば,それらは「実(邪)」である。人間関係や経済不振の悩みで病症が起きれば,人間関係と経済不振は実(邪)である。そのことは、短期間の実邪の存在であれば、それが取り除かれれば(解決すれば)、病症が治癒することによって分かる。

寒熱弁証については,張明澄(ウイキペデアによる)が次のような定義を与えている。中国医学の「分類」のなかでも、最も基本的な「陰陽思想」に基づくものが「熱寒」という概念であり、薬物をその効果によって、「温熱薬」と「寒涼薬」に二分類する。これを概念的に、つまり西洋医学的な「解釈」を加えて整理すると、「温熱薬」とは交感神経を興奮させる(優位にさせる)薬物であり「寒涼薬」とは副交感神経を興奮させる(優位にさせる)薬物である、と分かりやすく定義づけできる。

病気の「分類」に関する定義は、薬物の「分類」に対する定義をそのまま利用し「熱証」と「寒証」として設定される。「熱証」とは寒涼薬適用症状であり、「寒証」とは温熱薬適用症状である。つまり、診断によって「熱証」か「寒証」か決まったら、「熱証」には「寒涼薬」、「寒証」には「温熱薬」 を、投与すれば良いことになる。熱証寒証は必ずしも陽虚と実熱とは対応しない。例えば、陽虚でありながら熱証を示す場合があるからである。

(c) Dec. 2003, Yuichiro Hayashi