「淵田美津雄」について

淵田美津雄（ふちだみつお）は、「戦争放棄の理念を裏返して見れば、そこには日本が全人類への憎悪に終止符を打ったことを意味するのでなければならないと、私は思うのです。」と、言いつつも、
戦犯裁判の証人として、横浜の占領軍軍事法廷に喚問（かんもん: 公的な機関に呼び出して問いただすこと。）され、戦犯裁判とは、国際正義の名において人道に反した者を裁くのだと言っているが、勝者が敗者に対して行う、法に名を借りた復讐であると見て、反感と憎悪で胸を燃やし、戦争が終わってもアメリカ人を憎み、仕返しをしたいと思っていたそうです。

そして、アメリカ人にいじめられた日本人を探し、訴えようとしていた時に、アメリカに捕らわれていた日本軍捕虜が送還されて、浦賀に帰って来ました。
早速、捕虜たちに聞き歩いていると、あるキャンプにいた捕虜たちから、いろいろと日本軍捕虜に親切を尽くしてくれた、一人のアメリカのお嬢さんのお話を聞きました。

それは、捕虜たち全員が、「お嬢さん、どうしてそんなに親切にしてくださるのですか？」と尋ねたところ、お嬢さんは、初め返事をしぶっていましたが、皆が問いつめるので、「私の両親が、日本軍隊によって殺されましたから。」と、返事をし（両親が日本軍隊によって殺されたから日本軍捕虜に親切にしてやる？）、淵田美津雄は、なぜそのアメリカのお嬢さんが敵の国の人達に優しくしたのかが分かりませんでしたので、「詳しく聞かせてくれ。」と、膝（ひざ）を乗り出したそうです。

アメリカのお嬢さんのご両親は宣教師で、フィリピンにいましたが、日本軍に隠れ家が発見され、スパイだと疑われて、殺されてしまいました。
ご両親は、最後の時まで聖書を開き、祈りを捧げていたと言うのです。

やがて、事の次第はアメリカにいるお嬢さんの元に伝えられました。
父や母が、なぜ斬られなければならなかったのか。
日本軍隊を、憎しみと怒りに胸は張り裂ける思いでしたが、ご両親が殺される前の三十分、その祈りは何であったかをお嬢さんは思い、憎悪から人類愛へと転向したというのです。
淵田美津雄は、その美しい話を聞きましたが、その時点では、まだよく分からなかったそうです。

月日が流れたある日、渋谷駅前で一人のアメリカ人から、「私は日本の捕虜でした。」と題した、東京爆撃隊の爆撃手、Ｊ・デシーザー軍曹の写真が掲載された、キリスト教入信手記のパンフレットを受け取り、淵田美津雄の心は動きました。

Ｊ・デシーザー軍曹は、日本人の捕虜となり、獄中で虐遇（ぎゃくぐう:残酷な扱いをすること。虐待）されている時に、なぜ人間同士が、こうも憎み合わなければならないのかと考え、「人類相互のこうした憎悪を、真の兄弟愛に変えるキリストの教え、というものについて、かつて聞いたことに心が向き、聖書を調べてみようという、不思議な欲求にとらわれた。」と言っていることばが、同じ心境にある淵田美津雄の心を捕らえたのでした。

そして、早速、淵田美津雄は、聖書を買い求めて、新約聖書：ルカの福音書２３章３４節「そのとき、イエスはこう言われた。
『父よ。彼らをお赦しください。
彼らは、何をしているのか自分でわからないのです。』」を読み、
ハッ！と、あのアメリカのお嬢さんのお話が頭にひらめき、お嬢さんのお父さんやお母さんの祈り、「神さま、いま日本軍隊の人々が、私たちの首をはねようとするのですが、どうか、彼らを赦してあげてください。
この人たちが、悪いのではありません。
地上に憎しみ争いが絶えないで、戦争など起こるから、このようなこともついてくるのです。」と、
敵を赦しうる博愛（ひゃくあい：すべての人を平等に愛すること。）のお話が、はっきりと分り、目頭がジーンと熱くなるのを覚え、大粒の涙がポロポロと頬（ほお）を伝わったそうです。

淵田美津雄は、自分がいかに悪い人間であり、憎む事しか考えず、どのように仕返しをしようかと思っていたことが、恥ずかしくなりました。

そして、悔い改めて、主（イエス様）を自分の救い主として受け入れて、洗礼を受けたのです。

すると、淵田美津雄の心の中で、仕返しをさせようとする悪魔がいなくなり、神さまが望んでおられることをしようと、アメリカ中を回り、主（イエス様）に救われたことを伝えました。

アメリカでは、新約聖書：コリント人への手紙第二５章１７節「だれでもキリストのうちにあるなら、その人は新しく造られた者です。
古いものは過ぎ去って、見よ、すべてが新しくなりました。」のごとく、

大統領やマッカーサーを含め、戦争に勝利したアメリカ人達が、「あなたが、あの時の隊長でしたか！」と、戦争は過去のこととして、キリスト教を伝道する淵田美津雄を、温かく迎えた心意気も、素晴らしいですね。

１．「キリスト教」

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２．「東京都北区にある十条の街」

自信を持って紹介できる「十条の街」をセレクトしました。

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