俳人樗平の月見の句
園原の月見堂に、俳聖といわれた松尾芭蕉と三河岡崎の俳人鶴田卓池(明和5年〜弘化3年)の俳句を併刻した句碑があります。この句碑については、平成5年10月10日付の南信州新聞に、智里の熊谷紀夫氏(高森北小勤務)が詳しい記事を寄稿されています。
その記事の標題に「古蹟園原で最古の文学碑」とありますように、この碑の建立は天保12年(1841)で、建碑の先達は伍和宗円寺の十三世明誉和尚(俳号圭布)と、栗矢の井原九右衛門重穏(俳号樗平)であることが碑陰に刻されています。
樗平というのは、駒場にあった古代の関「安布知の関」に因むもので、この地には、樗街、樗城、樗斎などの筆名をもつ雅人が何人かいました。
図版は園原の熊谷秀二氏蔵の「木賊刈」と題した来遊者の寄せ書き帳にある樗平の筆跡で、
「名月や一と角はづす釣淡婆姑」
とあり、名月の鑑賞に邪魔になる軒端の乾し煙草を少し外したという意味。
園原では当時煙草栽培がされていたのでした。
(H5・12)