鐵斎筆の園原の歌
これは「園原和歌集」巻頭からの転載で、京都生まれの南画家富岡鉄斎の筆跡です。はじめに、「熊谷直一翁がものせし石碑を見て」と詞書して、
信濃なる園原山を踏わけて
うれしく見つるこれの石ぶみ 鉄斎
とありますが、署名は詞書の末尾と重なっていて、「石碑を見て」のての字がよくわかりません。
鉄斎がこの歌を詠んだのは明治36年10月で、二度目の来訪の折です。中津川から神坂峠を越えて園原に着き、前年9月建立した神坂神社境内の園原碑を見ての所懐です。
鉄斎はこのあと浪合村に尹良親王旧跡碑の除幕式に列席し、栗矢の原九右衛門と共に奥州松島に遊んでいます。
鉄斎の書としては例の少ない整然とした楷書体の園原碑は、今も飯伊の名碑とされています。 (S63・5)