無量寺のたたき鉦

 智里中平の集落センターには、その近くにあった天台宗長岳寺の末寺である福聚山無量寺の仏像が安置され、若干の什物が保管されています。

 この無量寺は、江戸時代中頃に設定された伊那阪東観音霊場三十三ケ所のうち第十七番の札所で、本尊は十一面観世音です。現在正面に鎮座しているのは高さ20pほどの座像ですが、その両側にはそれ以前の時代に本尊とされていたと思われる十一面観音の立像が二体あり、ひどく傷んでいますが最も古い像の顔立ちは、右面が少し焼けこげているものの気品のある穏やかな表情です。

 ここの什物に写真のような敲鉦(たたきがね)があり、外径が31p、内径26p、厚さ8.5五pあり、家庭の仏壇にあるたたき鉦の大形のものですが、あまり見かけない品です。鉦の縁に「信州下伊那郡上小野川村無量寺什物、明応代、観音講中、容雲量女。明和六丑三月吉日、西村和泉作」の刻字があり、戦時供出をのがれた230年前のたたき鉦です。  (S63・10)

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→ 『探史の足あと』 p.105
     かわいい馬頭観音像
→ 『探史の足あと』 p.64
     無量寺の古仏頭