黒船来航と阿智神社の祈祷札
〜 以下は要旨です (文責さんま) 〜

 幕末の黒船来航によって開港を迫られ、国中が大騒ぎになっている頃、昼神の式内阿智神社でも国土安全を祈願する祈祷が行われた。海のない信濃国では意外に感じるが、幕府又は神祇管領長から全国の式内3132社に対して祈祷の指示がなされたようだ。
 阿智神社には、嘉永7年(1854)と記された3枚の祈祷札が残されている。
 この祈祷は、「攘夷」か「開国」なのかは明記せず、「国家安穏」、「天下泰平」、「武運長久」、「五穀成就」などを祈念するにとどまっている。

表紙に戻る 総合目次 足あと 1章 愛郷 3章 神社の歴史 阿智の産土神
(1枚目)
 日本国中大小神祇三千一百三十二神 奉勧請祈願円満感応成就等
 今上皇帝天下泰平五穀成就国土安穏御守護之御祈祷所
  吐普加身依多女寒言神尊利根陀見波羅伊玉意喜餘目出玉
(右側面)
 嘉永七甲寅年二月十五日奉書之事也
(左側面)
 二三ヶ年後異国あみりか之船当来に付祈祷也
 
(2枚目)
  日月清明 五穀成就 波羅伊玉意 喜余目出玉
 奉勧請 征夷大将軍御武運長久国土安穏御祈祷大祓
  阿智神社
         吐普加身依多女寒言神尊利根陀見
  山王権現
(右側面)
 嘉永甲寅年二月十五日奉書之
 あめりか国あろしあ国の船当来に而祈所
 
(3枚目)
  日月清明 天清浄 地清浄 人清浄 根本清浄 恐申寿
       阿智神社
 奉鎮祭       御祈祷 村内安全氏子中祈所
       山王権現
  天御柱
       阿波礼阿南於毛志呂阿南多乃之 阿南佐屋気 於気於気 
  国御柱
                              神主原左右之進政応 
(右側面)
 嘉永七甲寅年二月十六日奉書之 神主
(左側面)
 異国あめりか国之船おろしあ国之船江戸深かわ長崎江付 御祈祷也
  
*大小神祇三千一百三十二神は式内社の総数と同じである。
*天皇でなく皇帝となっている。当時は孝明天皇である。
*時の征夷大将軍は、十三代徳川家定
*吐普加身依多女寒言神尊利根陀見 は、祝詞の呪文と思われるが意味不明。
   → 三種の祓 という祝詞だそうです。(さんま)
*朱印状の名称「山王権現」と、吉田家から許可された「阿智神社」を併称している。
*阿波礼、阿南於毛志呂、阿南多乃之、阿南佐屋気、於気於気
 (あはれ、あなおもしろ、 あなたのし、 あなさやけ、 おけおけ)
 は、戦時中の青少年鍛錬に行われた日本体操(やまとばたらき)の掛け声にあった。

〜 さんまのメモ書き 〜
 「あはれ・・・おけおけ」の一節は、「古語拾遺」に見られる。
天照大神が天の岩戸からお戻りになり、世界が明るさを取り戻した際、天の岩戸の前で神々が歌い踊って喜ぶ場面の掛け声である。

 あはれ:天が晴れる様、  おもしろ:顔が明るく白い、  たのし:手を伸ばして舞う
 さやけ:竹の葉の音、  おけ:木の名で、その葉を振るわす調べ