【題意】
「つちのと・い」の年の意。唐代僖宗の乾符6年(879)のことといわれる。
【詩意】
この美しく豊かな水郷の地も、戦渦に巻き込まれてしまった
こんな状況人々はどうやってささやかな生活さえ営むことができるだろうか
どうかあなたにお願いしたい 戦争で出世する事など話題にされぬようにと
一人の将軍が手柄を立てる時、その陰では数え切れぬ犠牲が払われているのだから
【語釈】
沢国=河や湖沼の多い低湿な地方。水郷。ここでは黄巣の乱の主戦場であった
荊楚江淮(四川、湖南、湖北、安徽、江蘇)地方を指すといわれる。
何計=反語。どんな方法があろうか。(いや、ない)
樵蘇=樵は木を伐採する。蘇は草を刈る。 憑君=君に頼む。
封侯=大名にとりたてられること。
【参考】
結句の「一将功成って万骨枯る」は有名で、今日では格言としても知られる。
曹松が生きた時代、長年に渡り隆盛を誇った唐王朝も衰退の一途を辿っており、
各地で反乱が頻発していた。己亥の歳の冬、黄巣の乱が起きる。
これにより唐王朝の崩壊は決定的なものとなった。907年、唐は滅亡する。
【黄巣(こうそう)】
生年不詳〜884年。中国、唐末の群雄の一人。
王仙芝が乱を起こすとこれに呼応し山東で挙兵。878年、王仙芝の軍が鎮圧されると、
余衆を従えて各地を攻略、ついに都長安を陥れて、国号を斉とし、自ら斉帝と称した。
唐の武将、李克用と戦って敗れ、自決。
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