水戸浪士大和田外記の述懐詞
昭島市の原克孝さんが、藤村の名作「夜明け前」から水戸浪士の駒場宿泊のことを寄稿されましたので、それに因んで浪士の一人大和田外記(げき)が、宿泊した木戸脇の「葉那屋」(林隆一さん)に残した扇面の漢詩を紹介します。変った書き方をしていますが、七言絶句です。
東陽豈料封夷襄 東陽豈料(はか)らんや封夷の襄
取義成仁在此間 義を取り仁を成すは此の間に在り
男子必非無激涙 男子必らずしも激涙なきに非ず
雲中泣指日光山 雲中泣いて指す日光山
述懐 藤英房(当時25歳、福井県敦賀松原海岸にて刑死)
この扇面は昭和50年頃、先代の林加平さんから見せてもらったのですが、解読が難しく、立石の塩沢正人先生や水戸市の碩学の先生の解読を総合したものの、なお起句(一行目)などに釈然としないところがあります。署名の藤英房(ふじひでふさ)は大和田外記の雅号ですが、英の字は最後の一画を省き闕画(けっかく)としています。 (H4・8)