灯の点せない常夜灯

 この石灯籠は、伍和上郷の集会所の前にあるものです。県道ばたなので、多くの人が見て通るわけですが、だれも「灯を点せない石灯籠」を不思議に思うことがないようです。江戸時代の石灯籠のうち、神社寺院の境内にあるものを除いて、村の中心部や高札場にあるものは、秋葉権現の灯明として造られたものが多く、この石灯籠もその一つで竿石には「常夜灯」とも刻まれています。

 よく見ると、最初は鉄枠か石枠の火袋があったらしく、ホゾ穴が笠石と中台(ちゅうだい)に見られます。たぶん地震などで倒れたことがあって(その時笠石の一角が欠けたと思われる)火袋が壊れ、誰かの機転で現在の姿にまとめられたものと推定されます。
 しかもこの火袋の丸石は五輪塔の水輪の転用と推測していましたところ、「近くの高越の薬師堂跡の墓地から運んできてわしらがやった」と、ある老人(故人)が話してくれました。
  (S63・9)

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