わが国最古の勅選漢詩集である「凌雲集」に、坂上忌寸今継の「信濃坂を渉る」という詩があります。
積石は千重峻しく 途危うして九折に分る
「凌雲集」の成立したのは弘仁5年(814)ころといわれ、伝教大師が信濃坂(神坂峠)を越えたのと同時期です。この写真は、伊那史学会の神坂峠見学に先立って、下見の際写したものですが、1200年前の「岩石は幾重にも積み重なってけわしく、危険な山道はつづら折りのように折れ曲って分かれている」という、坂上今継の詩さながらに、旅人の難儀をしのばせる岩石の道です。
このあたりの標高は1500mくらい、付近の熊笹の中では夏というのにしきりにウグイスが鳴き交わし、古代東山道への思いをつのらせてくれました。
(H4・6)