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Inside Farming Vol.33 (Japanese)



同じ林檎栽培をする先輩との出会い
 
 農業を初めて10年、今まで同世代の農業経営者とはよく酒を飲んでは話をしていた。しかし私と他の農業者の多くとは栽培品目が異なっていたため、特に「林檎の栽培方針」や「林檎農家としての経営」についての話題で人の意見を聞いたり、自分のプランを主張する場面は少なかったとおもう。先進的な林檎栽培研究の会にも入って勉強させてもらってもいるが、会員はひとつ上の世代で、もう十分過ぎるほどの経営基盤を固められたの方が多いせいか、なかなか私の身の丈に合った話をする機会は少なかった。

 それが、昨年から林檎の販売を協力しあうようになった先輩とは林檎栽培中心の経営形態が似ていることもあって、本当によく話をするようになった。林檎の作付け品種の事、防除の失敗の事、作業計画など私が迷っている部分について腹を割って議論して下さったり、お互いに「良い作物を作って向上していかなくてははならない!」というスタンスで、ノウハウに当たる部分さえ包み隠さずアドバイスをして頂いたりしている。農業には家庭内だけの一子相伝的なノウハウも多いで、亡父の後を継いで農業に入った私には本当に学び取ることが多い。また、先輩の林檎栽培に対する意気込みも大変なものがあるので大いに刺激されている。この出会いには本当に感謝だ(昨年の台風の功名か?)。

 さて、そんな先輩の意見。

 「有機栽培や低農薬栽培にハマッていくと、「有機」や「低農薬」を言い訳に本当の品質を”ないがしろ”にしていまう農家が時々ある。例えば林檎なら、葉摘み玉回しも一切やらなかったり、不揃いの大きさの玉を贈答にしたり、見た目が悪くても「有機」「低農薬」なんだからそれでいいだろう!という感じになってしまう。野菜だって虫がそこらじゅう食べていても、土がついていても、色が少々悪くても、それが「有機」だと言って納得して出荷しまう。そうやって何年かすると農作物の質がだんだん落ちていってしまうのに、生産者がそれに気づかない。そうならないように気をつけなきゃいけないよ」

 なるほど、確かにそうだ。私自身の考える林檎の品質というものは「見た目」よりも「味」や「安全性」にシフトしている。特に「安全」は何よりの品質じゃないかと考える部分も多い。でも、それをエクスキューズに「見た目」の品質を軽んじてはいけないだな!と改めて肝に銘じた意見だった(・・・もちろん今までもこれからも「見た目」を軽んじてはいませんよ。河合果樹園の贈答セットは見た目もしっかり頑張っているのですから・・・)。さらに先輩は「見た目」をないがしろにする精神は、丹精こめて育てるべきところを、手を抜いた栽培でよしとする経営につながると警告しているのだった。
 先輩がわざわざそんな話をしてくれたのには、今年の病害虫の発生を「お客様のための低農薬の結果」というエクスキューズで簡単に片付けたのでは進歩がないぞ!という忠告なのだ、ということも分かった。うれしかった。私はその忠告を真摯に受け止める事ができる。 
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