|
かつてビッグバンと呼ばれる大爆発より始まったとされ、茫漠なる空間に浮かぶ無数の星々の中から生命が発生できる環境の整った太陽と地球を輩出し、生命進化の歴史を経て現在は我々数多の人間が生きる場である「世界」。このように進化していく世界はその全てである宇宙全体が「世界」であると同時に、進化に伴い発生する太陽系・地球・生物・人類・個人といった存在たちも、その内を「全」とする「世界」と呼ぶことができる。そしてこれら「部分世界」の一つ一つを、時の流れの中存在し続けることで上へと伸びていく一本の「線」として表すなら、宇宙全体の姿は線の集合が線を成しこの線の集合がまた線を成すといった、いわゆるフラクタル的な構造で表される。(例えば「人類の世界」ならそれは、最初の個体の発生時に「生物の世界」より派生して「生物の世界」を構成する線の一本となり、その線は子孫を残すことで伸び続け子孫を増やすことで集合としての人類の線の太さを増し、維持されていくことになる) 世界は時の流れの中ただ存在し続けるだけでなく、それに併せてさまざまに移り変わり「変遷」していくものである。この変遷は場合によってはその世界に成長という「変化」をもたらし、さらに場合によっては世界を成長の果てに「完成」へと至らせ、次なる世界へと進化させる。そして個々の部分世界が辿る変遷と変化の数々は、その性質や順序において、各部分世界間で概念的な相似関係を見出せる。この相似する概念の数々を、10個の円領域「セフィラ」とそれを結ぶ22本の小径「パス」で表現したものが、「カバラ」という神秘思想において「生命の樹」と呼ばれるものである。そしてその22の小径は「魔術師」から始まり「世界」で終わる「タロット」に、10の円領域は「オシリス」から始まり「アトゥム」で終わる「9栄神」にそれぞれ対応している。(なお、個々のタロットカードにおける「正位置」と「逆位置」は、正位置がその変遷が成長をもたらした場合の状態を、逆位置が成長しなかった場合の状態をそれぞれ示している) このような相似関係の観点から見れば、上述した世界を表す「線」はまっすぐ上昇していく「直線」ではなく、輪を描きながら昇っていく曲線、即ち「螺旋」として表されるべきものである。(つまりその螺旋は、個々の世界内においては周回する相似点が上下で対応するように、各世界間においては相似点が中心に対して同じ角度で対応するように、描かれることになる) そしてこの螺旋の上昇を「時の経過」ではなく「成長」によって表した場合、それでもその曲線は不規則なペースながらも上昇していくが、二つの場合においてのみその曲線は螺旋ではなく、始端と終端が繋がった「円環」を描くことになる。一つはこの宇宙全体(あるいはそれをすら含むさらに巨大な何か)が真に無限であり、世界の可能性は既に実現し尽くされ、今ある世界は過去にも未来にも全く同じものが存在するという「無限の円環」、いわゆる「永劫回帰」と呼ばれる状態であった場合。もう一つはある部分世界がそれ以上の成長を行えないまたは必要としないなどの理由により、ある領域内を延々と巡り続ける「有限の円環」となった場合である。そしてこのように、世界がそれ以上成長すること無く堂々巡りを繰り返す状態は、「ウロボロス」と呼ばれる概念的存在によって象徴される。 「世界蛇」とも呼ばれるこの概念的存在「ウロボロス」は、自らの尻尾に噛みつき輪を描き、永遠に変わること無く生滅を繰り返す一匹の蛇の姿で表される。この蛇は自らの尻尾から胴体へとどんどん食べ進みどんどん小さくなって無へと近づき、最終的には自分を完全に食べ切って消滅するが、その姿は無の中から復活し、再び自らを食べ始めるとされる。また別の解釈ではウロボロスは食べた胴体を糧に新しい胴体を再生し、永遠に伸び続ける胴体を永遠に食べ続けるともされる。この二つの解釈は共にこの存在の「不変性」を示し、後者はその存在が「有」である時に訪れる「生命の樹」的な変遷に対して成長せず不変であることを、前者はその存在がいったん「無」となり「有」として復活する時に、以前の「有」の姿から全く変わること無く不変であることを示している。 世界が完成を目指し成長しながら先へと進んでいく螺旋の状態においては、その世界における「時の流れ」は意味を持ち、その世界の「存在」は価値を持つ。それに対して世界が成長すること無く無限に同じ所を巡り続ける円環の状態においては、時の流れは意味を失い存在も価値を失う。ただしこれはあくまでその存在の「内」だけで判断した場合の話である。成長しない円環的存在は裏を返せば、確たる「不変性」と「安定性」を持って存在し続けられるということであり、螺旋的存在は円環的存在の不変にして安定なる支えがあってこそ、自らの成長の可能性を思う存分試すことができる。(例えば我々が住まう地球という世界は太陽系という世界の安定した天体の運行に支えられ、人間を始めとする動物の世界はその体内外の微生物の世界の不変なる生態によって支えられている) そして円環を宿命付けられた存在にとっては、螺旋的存在を支えその成長に貢献することこそが、自らの存在価値を証明する唯一無二の祝福となり、その螺旋的存在が実現する可能性が高きものであればあるほど、祝福の喜びもまた強まることになる。 ■世界蛇「ウロボロス」のように自らを食らい自らを「無」へと変化させることができ、また他物体を食らうことでそれを「無」へと破砕する力をも持つ人型スタンド。その姿は通常の人型スタンド並の体格と筋肉を備えながらも外見は死体のように生気を感じさせず、その体表は皺や浮き出た骨を思わせる装飾が為され、その頭部は肩口までを覆う黒い頭巾に覆われ、頭巾に空けられた穴から覗く眼は虚ろで意思を感じさせず、頭巾に覆われていない顔の下半分は唇も鼻も無く、ミイラのように歯と鼻孔がむき出されている。そして蛇のように限界まで大きく開くことのできるその「口」の中には、『脳内心界』能力により作られた「暗黒空間」が広がる。 ■この「暗黒空間」は本体ヴァニラ・アイスの、不変なる「円環の精神」が能力化したものである。そしてこの「暗黒空間」内部は、世界が辿る「生命の樹」的な変遷を(成長を生むこと無く)通路のように辿った果てに、変遷の終わりにして始まりである「無」へと突き当たる。ただし「円環の世界」においては「時の流れ」が意味を失うように、この通路もまた実質存在しない概念上のものでしかなく、「暗黒空間」はその内部全てが入り口にして突き当たりといえる状態にある。また、「円環の世界」においては「存在」が価値を失い、世界が活動する「有」の状態と世界の終わりと始まりを結ぶ「無」の状態が等価となるように、「クリーム」のスタンド体とヴァニラ・アイスは「暗黒空間」に自らを通すことで、「有」なるその姿を一時的に「無」へと変化させることができる。 ■「クリーム」が人型スタンドから「無」へと変化する際には、まずスタンド体がその口内の「暗黒空間」へと本体ヴァニラ・アイスを呑み込み、次いでスタンド体が自分で自分を呑み込み始める。この際には「クリーム」の肉体は蛇の体の関節のように柔らかく捻り曲がり、これによって「クリーム」は自らの体を自らの口内に脚・胴・腕の順に捻じ込んでいき、最終的には自らの頭や口自体までをも呑み込み、その姿は世界から完全に消え去る。そしてスタンド体が消えた時点で、その内部のヴァニラ・アイスも共に世界から消え去る。(この呑み込む動作は体全体で5秒弱、上体だけが残る状態からなら1〜2秒弱で完全に完了するようである) また、「クリーム」が自分のスタンド体を呑み込んでいく際には、消えていくスタンド体と置き換えられるように、その体からは「暗黒空間」の突き当りである「無の円環」が展開される。「無の円環」は「クリーム」のスタンド体を中心に口の面と平行な円状に広がり、自分を完全に呑み込んだ状態でのその直径は大体1m弱となる。なお、概念的存在である「ウロボロス」の場合は、「無」となった後に自らの体を復活させるわけであるが、あくまで人間を本体とする「クリーム」が変化できるのは「無」の状態までで、その状態から元に戻るには、呑み込むのと逆の順序でスタンド体・本体を吐き出していくことになる。(余談だがこのスタンド名「CREAM」に、「OUROBOROS(ウロボロス)」の暗喩として用いられるアルファベット、延々とその表面をなぞり続けられる「O」が入っておらず、代わりに端までなぞったら引き返すしかない「C」から始まっているのは象徴的と言える) ■また「クリーム」は「暗黒空間」及び「無の円環」に自分以外の物体を呑み込むことで、その物体を「円環の世界」内における「時の果て」へと送り込み、「無」に等しい状態にまで破砕することもできる。つまりその破砕は現実世界におけるエントロピーの増大現象、例えば悠久の時の中で湖が干乾び岩が風化して崩れ去るさまを、無限に早回しした映像で見るかのように行われることになる。(こうして破砕された物体は、見えなくはなってしまうもののこの世界から「消滅している」わけではなく、塵とも感じ取れないほどの状態にまで破砕されているだけである。そして破砕された物体は後から呑み込まれ破砕された物体に押されて「無の円環」から周囲の空間に排出される) ヴァニラ・アイスの精神力に依存するその破砕力は、人類全体の世界を完成に導く力を秘めた螺旋的存在「DIO」への狂信を力に変えたかのごとく凄まじく、呑み込まれた物体は物質・生物・スタンドを問わず瞬時に完膚なきまでに破砕され、おそらくは何物もこの破砕に抗することはできない。(ただ、もともと「世界の始まりの無に等しい状態」を暗示するスタンド「ザ・フール」の「砂」だけは、「暗黒空間」に呑み込まれ粉々に破砕されてもスタンドのダメージとはならず、本体にダメージを返すことも無い) ■ヴァニラ・アイスの全身を呑み込んだ状態の「クリーム」は、本体の「体重」がキャンセルされるため重力に縛られること無く空中を飛行して移動することが可能となる。(その移動スピードは人間が走るのと同程度といったところである) またスタンド体の全身をも呑み込んだ「無の円環」の状態の「クリーム」は、本体・スタンド共に「外」の世界から完全に遮断され、さらに音や匂いなどいかなる生命反応も外に洩らすことは無い。以上の性質をもって「クリーム」は、空間内を自在に飛び回りその移動軌道上に敵を捉えることで、敵の肉体を削り取り攻撃を行う。「無の円環」は空気を呑み込み排出しながら空気に動きや密度変化をほとんど与えること無く移動し、軌道が壁や床など物体に重なるとそれを圧倒的破砕力で抵抗無く通過し、その瞬間だけ、きれいな切り口を残す円形の破壊跡と破壊音とによって自らの位置を敵に知らせる。このように、敵が持つ視覚を始めとする探知手段をほぼ無力化し、その身に反撃を受ける心配無く、一方的に一撃必殺の攻撃状態を保ち続けられる「クリーム」の戦闘力は極めて高い。ただし、姿を消した状態の「クリーム」とヴァニラ・アイスからは当然「外」の状況は全く見えないため、敵の位置を確かめるには最低でもスタンドの頭部を外に出す必要があり、この時だけは敵から反撃を受ける危険が生じる。
関連:
『ザ・ワールド』
|