DIOの呪縛 (スタンド名なし)
本体名:空条ホリィ <クウジョウ・ホリィ>
ジョセフ・ジョースターの娘、空条承太郎の母
能力:本体を衰弱させるツル植物状のスタンド
スタンド形成法 | 射程距離 | パワー |
---|---|---|
能力顕現体 | − | 低 |
当ページの要点
- ジョジョ3部に登場するスタンドは全て、「生命の樹」と呼ばれる図形に関係している。
- 空条ホリィのスタンドは「生命の樹」が左側に大きく曲がった姿である、「ソード」の暗示を持つ。
- 「ソード」は成長するものが、処理しきれない変化を負荷として抱えた状態を表す。
- 彼女のツル植物のスタンドは彼女自身に絶え間ない負荷を与え続け、衰弱の果てに死に至らしめる。
「ソード」のスート
ジョジョ第3部に登場する22枚の「タロットカード」は、占いの道具としてよく知られ、それぞれのカードにはさまざまな解釈が与えられている。そしてその解釈法の1つに、『生命の樹』と呼ばれる図像を絡めたものがある。生命の樹とは、宇宙・生命・人類・個人など、この世界の中で進化・成長する全てのものが、成長する際に辿る変化の共通性を図像化したものである。「セフィロトの樹」とも呼ばれるその図は、「状態」を表す10個の円形「セフィラ」と、円形同士を結び「変化」を表す22本の小径「パス」から成り、タロットはパスの方に対応している。(なお、第3部後半に登場する「エジプト9栄神のカード」の方は、セフィラに対応している)
生命の樹の図は左右対称になっているが、これには意味がある。右側のパスは成長体に「新たな状況への直面」という不安定化を起こし、左側のパスは「その状況への対応」という安定化を起こすのである。前者を「不安定化パス」または「軟化パス」、後者を「安定化パス」または「硬化パス」と呼ぶことにする。この2種類の変化がバランスよく起こることで成長体は、大きすぎる不安定化で自身を崩壊させることも、少なすぎる不安定化で自身を硬直化させることもなく、順調に成長していけるわけである。
ここでこの2種類のパスに一つのルールを与えてみる。それは、「生命の樹で左右対称に位置するパスは、順調に成長できるバランスである時には双方同じ長さで描かれ、そうでない時には過少な方が短く描かれる」というルールである。すると生命の樹はこのルールによって生じる4つの姿の1つとして、硬化パス側の長さが過少な姿、生命の樹が左側に大きく曲がった姿を持つことになる。この状態は、硬化パス側に軟化パス側が被さった形が「血に濡れた刃」を思わせることから、「ソード(剣)」と呼ばれる。(ここでは詳しく解説しないがこのソードは、「小アルカナ」と呼ばれる56枚のカード、それを4つに分ける「スート」の1つである)
不安定化に安定化が追いつかないソードの状態は、成長体にとって非常に過酷な状態である。そのためこの状態は、成長体自身が望まない外圧によって与えられることが多い。そしてもしこの状態が、いずれ成長体の破滅や死につながるものであるなら、当然早急に解消されなければならない。
その反面、命にかかわるほどではない事柄でのソードは、必ずしも悪い状態ではない。例えば仕事の締め切りが早いというソードの状態は、仕事への必死な取り組みや、効率的に仕事を片付けていくための工夫をその者にもたらす。「拙速は巧遅に勝る」とも言われるように、ソードの状態は使い方次第で成長の近道にもなるのである。ただしその場合でもその成長は、成長体への負荷と引き換えのものであること、また通常の成長より失敗に終わる確率が高まるものであることを忘れてはならない。
スタンド解説
■「ジョースターの血統」の一人である空条ホリィに発現したツル植物状のスタンド。トゲの生えたツタにギザギザの葉とヘビイチゴのような実をつけたスタンド像を持つ。
■いわゆる超能力であるスタンドとは、その本体に新たに生じた霊的な器官である。そしてこれを獲得したばかりの者は、この未知なる器官に戸惑い、自身の日常生活を多かれ少なかれ不安定化させられる。それがどういったものかは個々のスタンドの性質に大きく左右されるが、例えばスタンドが自分の感情に反応して暴れたり、自分の意識の及ばないところで勝手に発動し続けて自分に害を為すといったことが起こりうる。そしてこの状態を解消するには、スタンドという不安定さを抱えた状態に耐えながらそれに慣れ、制御できるようになるしかない。
■なお、スタンド能力はその発現初期にのみ、本来の能力とは異なる特殊な現象を起こす場合がある。スタンド使いにとって目覚めたばかりのスタンド能力は、まだ扱い方がよくわからないものである。例えば人が何らかの道具を初めて使う時には、使い慣れた者が決してしないであろう使い方をしてしまうことがあるが、それと同じことはスタンドを使う場合にも起こるのである。そしてこの現象は、本体がスタンド能力を使い慣れるにつれて失われていく。
■ホリィに目覚めたスタンドは、ホリィの祖先であるジョナサン・ジョースター、その肉体を奪った吸血鬼DIOがスタンド使いとなり、それが「ジョースターの血統」の強力さゆえに空間を超える「魂の信号」となってホリィに伝わり、それをきっかけに発現したものである。このきっかけ自体は(第4部から登場する「矢」に比べれば)あまり強力なものではなく、それに加えてホリィの無欲で平凡な性格もあって、ホリィは精神の個性を反映した能力を得ることはなく、せいぜい一般人には知覚できないスタンドを見聞きできるだけであった。しかし一方で「魂の信号」を受け続ける彼女の肉体は、その受信性能を高めるという能力を少しずつ目覚めさせていく。
■「魂の信号」の受信が始まった初期には、おそらくホリィの能力はビジョンを持たず、ホリィの肉体だけで受信を行っていた。しかし長期に渡る受信が彼女の肉体からビジョンを呼び覚まし、ツル植物状のスタンドとして「発芽」し、成長を始める。そしてホリィの肉体から「霊的な延長物」として生えるこのツル植物の材質と形状は、まるで地上波テレビに対する屋外アンテナのように、ホリィの肉体よりも「魂の信号」の受信に特化している。
■空間を超えてDIOから伝わる「魂の信号」には、テレビ放送の信号のようにDIOの魂の性質、即ち、気高さも慈しみもなく勝利と支配だけを求め、そのためには手段を選ばず他人の命すら歯牙にもかけないという性質が信号として乗せられている。そしてその揺るぎない、ある種のカリスマさえ有する悪の哲学は「邪悪な波動」となって、ジョースターの子孫へと強力に発信される。ジョセフ・ジョースターや空条承太郎は、この「邪悪な波動」に抗するだけの精神力を備えており、そしてその負荷に耐えた結果、精神の個性を反映したスタンド能力を獲得するに至った。しかしホリィにとって「邪悪な波動」は抵抗するには強大すぎるものであった。その結果ホリィの精神と肉体は、常時伝わり続ける「邪悪な波動」との不協和で変調をきたすことになる。
■ツル植物の発芽と成長は、まず背中から始まる。(これは背中という部位が人間にとって最も自分で目が届きにくく、意識しにくい部分だからであろう) この発現により「邪悪な波動」の受信能力は一気に高まり、ホリィは高熱を発して昏倒することになる。そして持続する強力な「邪悪な波動」は、彼女の精神と肉体を容赦なく蝕み続け、逆にツル植物はより成長してさらに強力に「邪悪な波動」を受信する。この悪循環で「邪悪な波動」の影響は時が経つほどに強まり、成長していくシダ植物は少しずつホリィの全身をおおい包み、50日ほどで衰弱の果てに死に至らしめる。この呪縛を解く方法はたった一つ、ホリィが死んでしまう前に「邪悪な波動」の発信源であるDIOを殺すことのみである。
■なお余談になるが、吸血鬼DIOは作中で、自分の体細胞から「肉の芽」と呼ばれるピン型の小さな肉塊を作り出し、これを他者の額から脳へと突き刺し埋め込んでいたが、これはホリィのスタンドの亜種とでも言うべき効果を持っている。肉の芽もまた「DIOの邪悪な波動」を空間を超えて伝える力を持っており、これを埋め込まれた者は常時脳に送り込まれる「邪悪な波動」によって洗脳され、DIOにカリスマを感じ忠実な配下となる。さらに肉の芽は、この洗脳に対する相手の精神的抵抗力を奪うためか、相手の脳をごく僅かずつであるが食い荒らしていく性質を持つ。その侵食は、相手の本来の精神がDIOと相容れないものであるほど激しくなると考えられ、早ければ数年で相手を死に至らしめる。
内部リンク
- 『ハーミットパープル』
- ホリィの父親ジョセフ・ジョースターのスタンド。自分の肉体または自分が触れた他の物体と同質の情報を宿す物体を「念写」できる。
- 『ザ・ワールド』
- ホリィ衰弱の元凶であるDIOのスタンド。その圧倒的なパワーはこのスタンドとDIOに「止まった時間の中で動ける」能力をもたらす。
- 『クリーム』
- 「コイン」のスートの暗示を持つスタンド。このスタンドが作り出す円盤型の領域は、触れた全ての物体を破砕しながら突き進む。