§2 全部原価計算会計システム(2007年米国特許要約)

林有一郎

損益分岐点図を併用する全部原価計算会計方法に米国特許が認定される 

全部原価計算とは、企業損益計算書作成の際に広く使われている普通の原価計算法のことで、代表的には、全部原価計算の下での標準原価計算が挙げられます。全部原価計算に相対する代表的な原価計算法は直接原価計算です。

製品(売上品+棚卸品)の原価は、製造原価と販売一般管理費などの期間原価から構成されます。全部原価計算では、製造原価は変動費である直接費と固定費である製造間接費とから成ります。製造間接費は、配賦によって売上品と棚卸品に分配されます。直接原価計算では、製造間接費は販売一般管理費と同じように全額が固定費として期間原価扱いされ、棚卸品には分配されません。

直接原価計算の場合に適用される45度線損益分岐点図とは、およそ100年前に米国で発見され、商業高校の工業簿記で直接原価計算における損益分岐点図として教えられている有名な図形で、下図の中で、正味製造間接費配賦額η=0とした場合に当たります。しかしながら、全部原価計算においては、従来より、会計実務に使用できる図形表示方法はありませんでした  

45度線損益分岐点図

1 45度線損益分岐点図

発明者による全部原価計算における損益分岐点図の作図方法は、企業会計実務者にとっては次のように、まことに簡単な方法です。企業損益計算書の中で、正味製造間接費配賦額η(イータ)=期首棚卸資産中の製造間接費配賦額-期末棚卸資産中の製造間接費配賦額を定義する。1に示すように、ηを固定費扱いとして他の固定費に加算して、従来の方法で45度線損益分岐点図を作成するというものです。

この方法は、結果的には大変簡単な作図方法ですが、このための理論解析は、実際は大変難解です。本図の誘導とその真実性の証明に当たっては、発明者によって大変複雑な理論解析が10年以上に渡ってなされました。これと同一テーマを約40年ほど前に米国のD.Solomonsが研究し、全部原価計算における損益分岐点図と損益分岐点公式を発表しており、その理論は現在の大学における会計学教科書に記述されています。発明者は、Solomons理論と発明者理論とを比較研究の結果、Solomonsによる理論は誤りであると結論づけています。

なお、本発明においては、標準原価計算における原価差異修正前の総利益を管理総利益QMと名付け、図2に示す管理総利益図の作図法も特許の一部となっており、こちらの方が重要ですが、説明は省略します。

  標準原価計算損益分岐点図

2 管理総利益図 

発明者は、日本国と米国に、この損益分岐点図を含む全部原価計算会計方法をビジネス特許として日本国と米国に特許出願しておりましたが、平成19年11月27日付けで、米国特許が認定されました(Accounting System for Absorption Costing,特許番号:US 7,302,409 B2)

 詳しい内容は、発明者のホ-ムページをごらんください。ホ-ムページでは、別に、ケインズによる投資乗数効果理論を根拠とする有効需要原理は数学的に誤りであることを証明しておりますが、その理由の一つとして、ケインズの投資乗数効果図は発明者による全部原価計算損益分岐点図と論理的に整合しないということを挙げています。

発明者は,この発明に伴う会計知識が世界中に広く普及し、全部原価計算損益分岐点図を伴う会計方法が会計ソフトビジネスにおいて、標準仕様となって企業会計に活用されることを望んでいます

全部原価計算会計システム(米国特許)(PDF)

リンク

ACCOUNTING SYSTEM FOR ABSORPTION COSTING( Text)

Accounting system for absorption costing - US Patent 7302409 Claims