普門院の板碑型名号石

 備中原の普門院に写真のような名号石があります。残念ながら頭部が欠損していますので、造立当時の形容がわかりませんが、この地方には珍しい板碑であろうと思われます。板碑は関東地方に最も多く、造立は鎌倉時代に始まり江戸時代初期に終わっています。この碑は「寛文十二年九月十八日」の造立銘がありますので、板碑としては末期のものですが、名号石としては阿智村内で五指の内に入る古いものです。

 上部に刻された梵字は、上半分欠けているのが「キリーク」、右が「サ」、左が「サク」で、阿弥陀如来・観音・勢至の弥陀三尊を表わしていて、中央に「南無阿弥陀仏法界」、下部左右に蓮の花と葉が線刻されています。現在の高さ125p、幅54p、厚さ10pで総丈は不明です。施主名や願文は裏面にも側面にもありません。伊那西国三十三所観音霊場の第二番札所となった由緒を物語る板碑型名号石と思われます。  (H2・9)

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