せせら笑いの狛犬

 阿智村の寺尾にある通称「おてろう様」の伊賀良神社には、写真のような少し風変りな狛犬が社前に置かれています。この神社は、江戸時代の河内村と栗矢村の両村中が氏子という山の神で、四百メートル余の参道並木は、伊那史学会から「伊那一」の称号を与えられており、村の文化財(天然記念物)です。

 山の神の狛犬という意識があって作られたものかどうかはわかりませんが、耳の下までさけた口は「山の犬」を思わせるものがあり、とぼけたような目と半びらきの口は「せせら笑い」のようにも見えます。山深い神社の前であるだけに、夕ぐれ時など薄明りの中で見たらゾッとしそうな表情です。

 台石に「向関村高坂孫兵衛」、「石工熊谷要右衛門」などの刻字が見えています。寛政年間頃の造立と思われますが確かではありません。村の石造文化財のうちでもユニークな造形です。  (S62・6)

表紙に戻る 総合目次 足あと 5章 愛郷 8章 さんまのメモ 更新記録