安布知神社のこま犬
 駒場の安布知神社の拝殿前の石段の両脇に、やや風変わりな狛犬の石像があります。狛犬は「高麗犬」が語源ですから、御祭神の新羅明神と結びつけて考える人がいたり、水野都沚先生は著書「伊那谷物語」の中で「稚拙なこま犬?」として紹介していますが、稚拙といわれるのは残念です。

 最近この狛犬に文字が刻まれていると教えてくれた人がいました。私も前々から関心はありましたが、刻字はないものと思い込んでいました。話を聞いて早速調べに行きました。大きな杉の木の下なので日影になり、風化した石肌から刻字を読みとるのは容易ではなく、そのために懐中電灯や手鏡を用意して行き、太陽光線を斜めに反射させて、何とか判読しました。

 胸の中央に「八幡宮御宝前」、その右に「奉寄進」、左側には年号と思われる刻字でしたが、最も知りたいその文字がどうしても読めず、しいて読めば「延……」でしょうか。当地に石像が作られるようになってからの「延」のつく年号は「延宝」と「延享」ですが、延享(一七四四〜一七四八)の可能性が多いと思われます。  (H2・10)
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