願かけ石

 中央公民館の近くに、医王山満願寺という小堂がありました。現在は生活改善センターに改築されて、馬場五反田部落の集会所になっています。本尊諸仏は昔のままに保存されて、センターの正座に安置されており、地元の婦人方は時折御詠歌を和讃するといいます。

 その諸仏の前に不思議な石があり、長方(写真では横)22p、幅13.5p、厚さ6pで、中央に径1p足らずの穴が貫かれています。よく見ると刻字があり、左に「天ホ子年」右下に「巳年」までは読めるがあとの一字は「男」と読みたいけれど上が「白」で、下は力ではない。「天ホ」は「天保」のことで画数を減じて「ホ」にしたもの、子年とは天保11年(1840)にあたります。

 多分、耳が聞こえるようにとか、目が見えるように、という願かけの石、または大願成就の願ばたき石と思われます。それにしても6pの堅い石に、よくぞ穴をあけたものです。小さい石ですが、人の一念のすさまじさを、まざまざと感じさせられます。  (S58・11)

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