両手に物を持つ観音石像

 阿智村には、江戸時代に観音霊場と定めた堂庵が二十か所もありました。その大別は、伊那西国に属するもの二か所、伊那坂東が七か所、伊那秩父が十一か所です。これらのお堂や庵には、それぞれ観世音像が安置されていて、村人や巡拝の人々の信仰の対象となっていました。

 村誌編纂の折にこれらの堂庵を調べてわかったことですが、その観音像の中には、屋外にある野仏には見られない変わった姿態の石像があります。
 下の写真は伍和下郷の金勝堂の石像で、高さ50p足らず、粗末な木箱に入っています。右手に蓮花を持ち、左手に宝珠を持っています。たぶん聖観世音像かと思いますが、両手に物を持つ像はあまり見かけません。頭部も宝冠なのか頭髪なのか定かでありません。よく見ると表面の凸部が異様に光っており、参拝者が「おびんずる様」のように撫でたようです。
 重くて背部の調査ができず、なぞを秘めたままです。
  (S62・12)

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