大六の山田さんの裏山に、写真のような芭蕉句碑があります。碑石の高さ95p、幅63pの立派な句碑で、表には
「名月や池をめぐりて夜もすがら はせ越」
とありますが、人通りの少ない場所のため知る人は少ないようです。
表面を見ただけでは何の変りもありませんが、碑の後ろへ回わると、「九九齢 山田久内翁祝賀記念、明治三十年九月九日建設 有志中」の刻字があり、建碑の由来を偲ばせます。「九九齢」とは一体何のことかと戸惑いますが、これは九十九歳のことではなく、掛け算の「九九八十一」で八十一歳の賀寿のことのようです。
お家の方のお話では、この久内じいさんは鉄砲打ちが好きで、年中山歩きをした。句碑のあるこの山に、しめじの菌土や雑茸の菌を採集して来て培養したといいます。そして茸の出る季節には客人を招いて宴を催したとのこと、俳句結社「信南真連(まことれん)」ではこの建碑を記念して特集号を発行し、「羽織着て案内(あない)申すや茸狩り」と久内自身の句があります。揮毫者は浄久寺の武川有無香(うむこう)、建立は九月九日と念の入った風流味を添えています。 (H3・4)