念仏平の童女供養塔

 曽山の庚申坂を登って大沢へ通ずるかつての中馬街道(伊那街道)の途中、念仏平に2基の石塔があります。一基は享保七年造立の南無阿弥陀仏=名号石ですが、他の一基は碑高1.08mの自然石で、その刻字をたどるほどに160年前の悲話を偲ばせます。

(中央)奉納大乗妙典六十六部、
(左右)天下和順 日月清明、
     蓮誓善童女 俗名ふじ、
     願主 作州津山林田松原 良造、
     文政八乙酉十一月十一日寂、
     立合同行衆中、宿当村新兵衛。

 作州は岡山県です。十歳足らずの娘ふじが親と共に善光寺参りの途中で病気になり、大沢の新兵衛さんの家で亡くなって、この地に埋葬したのでしょう。
 親は悲嘆の中で諸国をめぐり六十六ヶ所の霊場に納経しこの供養塔を建立しました。いま廃道はすすきの秋となっています。 (S59・8)

表紙に戻る 総合目次 足あと 4章 愛郷 8章 さんまのメモ 更新記録