廃寺(常念寺)の秘仏

 これが仏像だと言ったら、「まさか?」と思われる方が多いだろうと思います。村誌の調査で村内のお堂や無住の廃寺などを訪ねました時、ところどころで思いがけない仏像に対面しましたがこれもその一体で、最初は何か民間信仰の、いわば「邪教の偶像」かとさえ思う異形の顔立ちに驚きました。

 これは小野川の常念寺にあるもので、像高30〜40pの立像で、円形の蓮花の台を踏んでいますが、両手はひじから、両足は甲から先が欠けていて、多分薬師如来と思われますが定かではありません。
 それにしてもこの長い顔と長い鼻の下、吹き出しそうな口つきは、よくよく見ると当初のものではなく、何らかの理由で顔面が損傷したので、後世の人が顔面だけ作って貼りつけたらしいのです。たぶん全くの素人の彫刻なのでしょう。しかしこの表情は、うす暗いお堂の中でローソクの灯りにうつし出された時、不思議な尊厳さと神秘的な法力をもつ顔に変るのではないかと、角度をかえた写真を見ながらそう思われます。   (S63・8)

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