二社併称とは、一つの神社に二つの神社名が公然とある、という意味です。正式の神社名の外に、いわゆる俗称のあるのは、智里中平の大平神社が【頭権現様」と呼ばれているように珍しいことではないのですが、寺尾の伊賀良神社には二つの神社号が時の神祇管領長に公認されています。下の神道裁許状には、
「信濃国伊那郡河内栗矢両村産神(うぶがみ)手羅尾(てらお)山神、伊賀良神社、
河内村天満宮祠官 原和太司(わたじ)平往貞、風折烏帽子狩衣を着し、
専ら恒例神式を守り、太平精祈に抽(ぬき)んずべし、者(てへれば)
神道裁許状件(くだん)の如し。(訓読)
寛政九年十月二十三日 神祇管領長上 正三位侍従 卜部朝臣良連」
と記されていて、二社併称が歴然としています。
この神社は、昔から「おてろう様」と呼ばれていて、奥宮と前宮があり、前宮は里宮ともいわれ、参拝の便利をはかる社殿と思われますのに、これを二分して奥宮を手羅尾(寺尾)山神社、里宮を伊賀良神社としたもので、御祭神も全く別の神を祀っています。(詳細は阿智村誌参照) (H1・5)