いろいろな皮膚のトラブル

ステロイド外用剤の副作用? 酒さ様皮膚炎(ステロイド酒さ)

Q and A

質問

2年まえに顔に軽い湿疹がはじまりました。近くの皮膚科にいって、ロコイド軟膏(写真)をもらいました。ぬると良くなるのですが、やめるとまた赤くなったり、がさがさしたりします。

薬がなくなると、皮膚科にいっていろいろなステロイドをもらいました。リンデロン軟膏、マイザー軟膏(写真)、ステロイドがだんだん強くなっていきました。
ぬると赤みもひいてよくなるのですが、やめるとまたぶつぶつでてきます。

さくらんぼ

最近は、主にマイザー軟膏になっていて、昔はなかった部位にも湿疹や、にきびのようなぶつがでるようになりました。 顔以外には、何もありません。(写真)

ステロイド酒さ(酒さ様皮膚炎)かもしれませんね。

ステロイド外用剤を繰り返しぬっていると、「ステロイド依存」がおきます。「酒さ様皮膚炎」は顔に生じたステロイド依存で「ステロイドざ瘡」「口囲皮膚炎」などと呼ばれます。初めは、ステロイド外用剤を塗ると赤みはよくなりますが、外用を中止するとすぐに再発するようになり次第に症状が悪化、やがて外用がふえ、塗るのを中止すると急激に症状の悪化がおきるようになります。

治療として、「ステロイド外用剤の中止」が必要です。

中止後3日目くらいから、症状が悪化し、顔が赤くなり、むくみ(浮腫)やほてりがおき、乾燥もして、皮膚がほろほろはがれる(落屑)ことがあります。ニキビのような丘疹もできます(写真)

これら反発現象による症状の悪化のため、ステロイド外用を再開してしまう方もあります。 多くの場合は2週目にピークをむかえ、その後ゆっくり改善していき、6週間をすぎると症状はごく軽くなります。
皮膚は乾燥しますが、よくなるまで、「何も塗らない」ことが大切です。

次の点に注意をしてください。

さくらんぼ

治療薬としてテトラサイクリン抗生剤が有効なことがあります。

ステロイド外用剤の使用期間が長い方や、強いランクのステロイドを使用されているかた、またステロイドの内服を併用しているかたは、良くなるまで数ヶ月必要です。

挿し絵 さくらんぼ

8週間後、素肌がきれいになりました。

1日中洗顔もせず(界面活性剤を使わないこと)何もぬらずに、皮膚を刺激しないで過ごすと、ゆっくりよくなっていきました。
顔の赤いときは、外出するのも苦痛でした。よくなるか心配していましたが、2週間をすぎて、むくみがひいて、治っていくことを実感しました。
今では、乾燥もなく肌はつるつるです。

良かったですね。

医者付)口囲皮膚炎
口のまわりは、同じこと(ステロイド依存)が置きやすい部位です。ステロイドは脂溶性なので、皮脂腺がたくさんある顔・口囲は一段と吸収が高くなり、副作用もでやすくなります。少量の外用でもおきるので、「口囲皮膚炎」という名前があります。
症状は口のまわりの発赤と「にきび」様の皮疹が生じます。

ステロイド依存について
ステロイド外用剤による副作用の大半は、外用局所に生じるので、早期に発見できるはずです。しかし、「ステロイド依存」による症状は、皮膚萎縮などに比べて、より捉えにくく、潜行性の副作用です。
慢性湿疹では、脂漏性皮膚炎やアトピー性皮膚炎で生じることがもっとも多いといわれています。
リバウンド現象は、原疾患の症状の変動であるとして関心を持たれないので、リバウンドが重篤であれば、より強力なステロイドが処方されますが残念なことにそれは、ステロイド依存をより深刻化させる始まりにもなります。

「ステロイド外用中」 「外用中止後3週間」 「外用中止後2ヶ月」

●ステロイド外用剤による副作用

1.細胞の増殖ないし線維新生抑制作用に基づくもの
(1)皮膚萎縮
(2)萎縮性皮膚線条
(3)乾皮症ないし魚鱗癬様変化
(4)創傷修復遅延
(5)星状偽瘢痕
(6)ステロイド紫斑
(7)ステロイド潮紅
(8)毛細血管拡張
(9)酒さ様皮膚炎
(10)erythrosis interfollicularis colli
(11)cutis linearis punctata colli
(12)ステロイド弾力線維症
(13)ステロイド稗粒腫
(14)ステロイド膠様稗粒腫
(15)色素異常
2.ホルモン作用によるもの
(1)ステロイドざ創
(2)多毛
3.免疫・アレルギー抑制作用によるもの
感染症の誘発および増悪
4.その他
(1)口囲皮膚炎
(2)光線過敏症
(3)ステロイド外用剤による接触皮膚炎
出典:PTM Vol.9, 7(8) AUG.,1998

●主要外皮用剤一覧
主要外皮用剤一覧
一覧をクリックしていただくと拡大表示されます。