講演会「蟹工船と日本国憲法」
2月21日、ぴゅあ富士で国際政治学者畑田重夫先生の「蟹工船と日本国憲法」 ―私たちは今をどう生きるか― と題した講演会が開かれました。
小林多喜二の「蟹工船」の文庫本が50万部も売れているという社会現象を反映してか大勢の人が参加され、3階の大研修室はほぼ満席になりました。以下は私の印象です。
講師にふさわしかった盆梅
講演の前に演台横の盆梅が紹介されました。盆梅とは文字どおり盆栽の梅のことで、春の季語です。畑田先生はぴゅあ富士の備品かと驚いたそうですが、実行委員の一人が貸してくれたものです。素人目にもすばらしい盆栽で、この日にあわせて五分咲きに仕上げたのだそうです。薄桃色の花が会場の雰囲気にぴったりで、85歳の畑田先生の風格と絶妙のバランスを描き出していました。
畑田先生は自己紹介の段階から憲法を引用しました。憲法24条 婚姻は、両性の合意にのみ基づいて成立し、夫婦が同等の権利を有することを基本として…を根拠にしつつ、ゆっくり話し合う時間もないので、ジャンケンで決めたのだそうです。3回ジャンケンをして1勝2敗で奥さんの苗字になったと語りました。
畑田先生はユーモアを交えて1時間45分にわたって日本の現状と展望を縦横に語られ、参加者を励ましました。
政治家に求められる資質
日本の政治の現状について話を進めた畑田先生は、政治家の条件として政策立案能力が求められるが世襲政治家はその能力に欠けている、「平和新聞」の新年号で対談した元自民党幹事長(旧制中学卒、町議、町長、府議、副知事を経て1983年衆院議員)の野中広務さんとの比較で、庶民の苦しみが分からない、平和の尊さがわからない、彼らは政治屋であって政治家ではないと語りました。
学べば分かる政治の曲がり角
一方で、閉塞感がただよう日本社会だが、「蟹工船」が読まれる前段で映画「日本の青空」や「母ベえ」が話題になり、歴史を学ぶ機運が高まっていたこと、過酷な労働条件に置かれ人間としての連帯を求める若い労働者群が生まれていたことを明らかにし、平和と国民生活のうえで進歩と逆流のせめぎあいになっている現状を描き出しました。
そのうえで世界からみて異常な日米同盟関係、そこに国民の苦しみの根源があること、さらにアメリカ中心の一極支配を打開する可能性を、国際政治の具体的な動向を示し浮き彫りにしました。
畑田先生は2010年を節目の年と強調し、当面は総選挙勝利に全力をと訴えました。「多喜二のように生きようとまではいわないが、憲法第12条にあるように平和と民主主義、社会進歩のために『不断の努力』を払いながら生き続けよう」と結びました。
先生の著書はあっという間に売り切れ、参加者に「ありがとうございました」と言うと「お礼をいうのはこちらです」という返事。暖かい連帯感を強く感じた講演会でした。