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世界的視野が足元を明るくする(2)

 先々週の「世界的視野」に関わって、ある人からのメールで情勢認識を捕捉する記事を知らされました。3月議会が2日から始まっていますが、短くて分かりやすい文章なのでそのまま紹介します。週刊ダイヤモンド編集部によるものです。(中見出しの一部は小林)

雇用環境も福祉も欧米以下!
日本は「世界で一番冷たい」格差社会

 米国の著名社会政治学者が大警鐘
 日本の格差問題も英米に比べればまだまし――。そう考える人は多いことだろう。しかし、ハーバード大学のマルガリータ・エステベス・アベ教授は、福祉機能で米国に劣り、雇用環境で欧州以下の日本こそが、先進国で一番冷たい格差社会であると警鐘を鳴らす。(聞き手/ジャーナリスト 矢部武)
 日本で格差問題が悪化したのはアメリカ型の市場原理を導入したからではないか、との批判が高まっているが、これにはいくつかの誤解がある。

意外な(?)アメリカの現実
 アメリカは確かに国家の福祉機能が小さく、利潤追求と競争の市場原理を重視しているが、それがすべてというわけではない。市場原理にまったく従わない民間非営利セクターが大きな力をもち、福祉機能、すなわち社会を維持する役割を担っている。
 貧困者や市場で失敗した人たちの救済活動はその分かりやすい例だろう。
 非営利団体はホームレスのシェルター(無料宿泊所)を運営したり、食事や古着を提供したりしている。ハーバード大学の学生も忙しい勉強の合間にボランティアで恵まれない子供に勉強を教えたり、あるいはシリコンバレーで成功した人が社会貢献活動をするのがブームになったりしている。このようにアメリカには、政治に対する意識とは別に自分が社会に何を還元できるのかを考える人が多いのである。
 日本はアメリカと似て国家の福祉機能が小さく、また、「自助努力が大切だ」と考える人が多い。しかし、企業や社会にはじき出された人を守るシステムが弱く、家族に頼らなければならない。経済的に余裕のある家庭ならばよいが、問題は家庭内で解決できない時にどうするかである。
 意外に聞こえるだろうが、生活保護の受給条件はじつは日本のほうが厳しい。アメリカでは個人に受給資格があればよいが、日本では家族の所得も事実上調査される。大学教授だった私の友人は裕福だが、息子は生活保護を受けている。日本だったら、まずあり得ないだろう。日本の役所は生活保護の申請書をくれなかったりするが、他に助けてくれるところがないから行政に行っているのになかなか助けてくれない。
 ちなみに、アメリカ型の市場原理に対する批判はヨーロッパでもある。ただ、欧州先進国の多くは国家の福祉機能が大きく、「市場で失敗するのは個人だけの責任ではないので、国家が助けるのは当然だ」と考える人が多い。こうしてアメリカとヨーロッパ、日本を比べてみると日本が一番冷たい社会のように見える。
(つづく)