今議会で、来年度を初年度とする長期総合計画の基本が示されました。
市の長期計画は昭和44年を初年度とする総合開発計画から始まり、今次計画は第五次となりますが、私は市のホームページで「都留市のあゆみ」をふりかえり、むしろ長期計画を策定する前の10年間にこそ都留市はその礎を築いたのではないかと感じました。
その10年間にはさまざまなインフラの整備、都留短期大学の設立と4年制への移行、市民会館の建設など、厳しい財政のもとでもさまざまな事業が進められました。最初の長期計画が策定された昭和44年は現在の市役所の庁舎が完成した翌年ですから、長期計画は新庁舎と共に歩んだといってよいかもしれません。
そして幾多の困難を乗り越えて、いまや都留市のシンボルとなった都留大の存在をもって、今次長期計画は、「まちづくりの方向」のトップに「『教育首都つる』をめざしたまちづくり」を掲げています。まさに歴史の上に都留市の現在があると実感するスローガンです。この機会にあらためて先人の労に敬意を表したいと思います。
さて、まちづくりの基本はいうまでもなく豊かな市民生活であり、その実現によって市民が自分の住むまちに誇りを持てることだと思います。そういう立場から、市の長期計画の基本についてただしたいと思います。
その第一は「スマートシティ都留」というスローガンです。解説では「米国の都市開発の潮流においては…」云々といっていますが、アメリカのまちづくりについては、先のニューオリンズを襲ったハリケーンで実体を垣間見ることができました。差別と貧困を放置したまちづくりなどありえません。まちづくりではむしろドイツなどに学ぶべきではないでしょうか。
社会保障や都市計画において数十年先を行くヨーロッパはスマートというよりもむしろ泥臭く、愚直に長期計画を立て追求してきた歴史ではないかと思います。それでいながら今、洗練されたまちづくりに成功しています。もちろん、市長の意図しているところが「めざすものは同じ」というのであれば、問題はありませんが、そうであればスローガンの中身は分かりやすく市民に語られる必要があると思います。
次に、政府が掲げる「大きな政府から小さな政府」「官から民へ」さらに「民間委託の推進」ということばが、そのまま受け入れられているようにみられることに不安を感じます。「小さな政府」=公務員の削減であれば、そもそも日本の公務員は諸外国に比べてむしろ少ないし、これ以上の削減は社会保障や教育関係の公務員の削減に直結し、行政サービスの後退、個人負担の増大につながります。さらに「官から民」が歯止めなく進められた先に利益最優先がもたらしたJR福知山線の脱線事故、昨今の建築確認の民間委託による耐震強度の偽装問題につながっていることを考えなくてはなりません。これらは官が責任を負うべき分野はしっかり守られる必要があることを教えています。市政はさまざまな意味で市民の頼りになる存在であってほしいと願う立場から、当局の真意を問うものです。