日本社会の異常さ、浮き彫りに
「私の戦後六〇年 日本共産党議長の証言」を読んで
不破哲三議長の本が新潮社から出版されるということで話題になり、一般紙でも取り上げられました。本ですから普通だと「書評」欄ですが、「ニュース」になったことでマスコミの注目度が分かります。記者会見までしたのは共産党議長の本を出版することが新潮社にとっては特別のことなのでしょう。
たしかに不破議長は「著書130冊以上」ですが、その多くは新日本出版社など党と民主団体の出版物を手がけている出版社からのものが多いのです。新潮社の力の入れ方はホームページの紹介文で分かります。
「政治家生活34年、18人の総理と対決した著者が、自らの人生を回想しつつ、反省も総括も清算も何もなかった、“頬かむりの60年”を解説し、戦後史の真実を衝く! 全日本人必読の書!」 全日本人必読! すごい売り込みですね。
8月20日発行というその日に手に入りましたので、早速読んでみました。「これは『手紙』で取り上げなくちゃ」と思い、表題を決めてから今週の「赤旗」日曜版を開いたらなんと9ページでしっかり特集しているではありませんか。しかし、取り上げるには私なりの思いがあります。
「私の」でなく「日本の」戦後史
不破議長は、それこそ縦横に戦後史を語ります。「日米核密約」についての日本側代表の能天気ぶりに驚かされます。田中角栄の「日本列島改造論」のでたらめな論立てや「北方領土」交渉の無策ぶりにあきれ果てます。
不破議長は「歴史を語る場合に、自分が体験した事実や自分が記録その他で事実として確かめたもので歴史をつづるという点は、最初から最後まで貫いた」と語っていますが、それだけにこの本は、私たちの歩んできた人生を確かなものとして実感させてくれるのです。同時に、日本の政治の表舞台に立ってきた与党政治家の軽さ、無責任さを実感します。それはイラクに派兵し、郵政民営化を主張する小泉首相にそのままつながります。
解決せまられる三つの異常
小泉首相がテレビで絶叫していました。「民営になればお金儲けに必死になり、お金が儲かれば税金を納めます。お金が民間に回れば、経済は活性化します。一部の公務員という特権にしがみつく人達に妨害させてはならない」。すでに国会で論破されている主張を、マスコミを意識して大きい声で繰り返します。
「国民を苦しめている害悪のおおもとは郵便局にある、とでもいうのでしょうか。」不破議長は国民の常識を対置します。
最後に、21世紀は「無戦略」ではやっていけないと不破議長は強調します。アメリカ言いなりで外交戦略がないとアジア諸国から見られている日本、では内政はどうか。深刻な借金国、最悪の食糧自給率、歯止めのかからない少子化、内政も無戦略ですが、そのおおもとに「三つの異常さ」があると指摘します。
過去の侵略戦争の“名誉回復”をはかる異常さ、もっぱら「アメリカの窓」から世界を見る異常さ、“ルールなき資本主義”の国という異常さ、です。戦後史を理解し、変えていくキーワードになる重い指摘です。