歴史的な「歴史の本」の話

 「政府は7日、年内開始に向けて準備する日韓有識者による第2次日韓歴史共同研究について、両国の歴史教科書の検証を初めて研究テーマに取り上げる方針を固め、韓国側と調整に入った。」8日付の新聞報道です。
 中国・韓国との関係悪化のもたらす影響の大きさに気づいて、政府もようやく打開の方策を探る気になったようです。しかし、民間の共同は3年も前に始まっていました。

日本・中国・韓国=共同編集
未来をひらく 歴史 東アジア 3国の近現代史

 5月29日付「しんぶん赤旗」でこの本を知り、求めました。「自国中心の歴史は、21世紀には通用しない。"開かれた歴史認識"の共有をめざす日・中・韓3国の研究者・教師らが、3年間・10回の国際会議を重ね、共同編集・執筆した近現代史入門書。史上初めての先駆的労作!」カバーの帯の一言です。
 カバーには「この本のなりたち」が。
◎2001年春、「新しい歴史教科書をつくる会」の教科書が出現し、日本だけでなく中国、韓国でも強い反対運動が起こりました。この中から、たんに批判するだけでなく、共有すべき歴史認識の構築が必要だという声が生まれ、日中韓3国の研究者、教師、市民によって2002年3月、第1回「歴史認識と東アジアの平和フォーラム」が中国・南京で開かれました(第2回は03年2月に東京、第3回は04年8月にソウルで)。
◎このフォーラムの中で3国共通の歴史教材を共同で作ることが話し合われ、各国にそのための委員会が組織されました。その第1回国際会議を02年8月にソウルで開催、以後05年1月の東京での第10回会議まで、日本で4回、中国、韓国で各3回の国際会議を重ねて、ついに実現にこぎつけたのです。

中国・韓国旅行に必読の書
 この本の執筆に当たった人は3国で50人以上です。その共同作業が、3国の歴史を同時並行で進行させ、それぞれの国の歴史と相互の関わりを生きた姿で展開させることを可能にしたと思います。読者はこうした組み立てのおかげで、日本の歴史をより深くとらえられるのではないでしょうか。もちろん目の高さは民衆の生活です。
 この本では21世紀の東アジアの平和のために、日本の過去の膨張主義=侵略戦争が中心的に描かれています。3章の《まとめ》では「前事不忘 後世之師(歴史を忘れず未来の教訓にする)」という中国のことわざを引用し、「日本の侵略戦争と植民地支配の歴史からどのような歴史の教訓を引き出し、東アジアの平和を築き上げるための歴史認識を身につけていくかが大切です」と強調しています。
 終章の最後では、「歴史に学び、本当の和解と平和を実現することは、今日の東アジアで生きていく私たち一人ひとりの課題です」と結んでいます。
 この本、ネットで検索したら3345件もヒット、5月26日発行で、もうベストセラーです。メル友のSさんに紹介すると、すでに「ドキドキしながら読んでいる」と返事がありました。歴史に残る本と確信しました。


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