日本の総医療費は高くない
政府が「医療費が高い」「高齢者が多くなって医療費がどんどん増えている」という情報をたれ流すなかで、多くの人が「それはそのとおりだろう」と思っているのではないでしょうか(読者のみなさんを除く)。
1月16日付山梨日日新聞で色平哲郎(いろひらてつろう)さんの「旬言」が、この問題を取り上げていました。「医療費と『常識のウソ』」。色平さんは長野県厚生連佐久総合病院内科医師です。先週に続いて新聞記事の抜き書きですが、「赤旗」でないところがいいと思いませんか。(中見出しは小林)
日本の年間総医療費(患者さんの自己負担と、国や自治体の公的負担、会社などの事業主負担の総計)は約30兆円。数字だけ見れば、大きな金額との印象を受ける。
総医療費30兆円は高いか
ところが、先進国の集団とされるOECD(経済協力開発機構)のデータ(2000年)では、日本の医療費水準は他国に比べて「非常に低い」。
日本のGDP(国内総生産)、つまり国としての「稼ぎ」に対する総医療費の割合は7.6%。OECD内で下位3分の1あたりだ。
先進国の中では、唯一、英国が7.3%と日本より低かったが、2000年、ブレア首相は「長年の医療費抑制策で公的医療が第三世界レベルにまで荒廃した(緊急手術を要する患者が何カ月も待たされて死亡、医師の人手不足と長時間労働、モラル低下など)。これを立て直すため、05年までにドイツ、フランス並みのGDP比10%まで医療費を拡大する」と宣言し、「医師1万人、看護師2万人増員」のプランを示して実行。英国政府は、この5年間で医療費総額をじつに「1.5倍」に増やそうとしている。統計はまだ示されていないが、現時点で日本は英国に追い越されているだろう。
高いと錯覚させたうえで
国際的にみて、日本の医療費水準は非常に低く抑えられている。にもかかわらす、国民が医療費は「高い」と感じる。なぜか?
国民一人一人の負担が大きいからだ。
30兆円の内訳をみると、家計負担(保険料支払いと窓口負担)が45.4%、公的負担が32.4%、事業主負担は22.3%。
国民の自己負担率は、最近、韓国のそれが急上昇するまで、世界で最も高かったが、公的負担、事業主負担は極めて少ないのである。
だが、日本政府は、「巨額な医療費」という常識のウソを前提にしたまま、「高齢化が老人医療費を押し上げる」という、これまた根拠のあいまいな一側面のみを強調し、ますます、公的負担から国民負担へとシフトしようとしている。そして、規制緩和の大号令のもと、医療に市場原理を導入。民間企業への門戸開放の地ならしを進める。「混合診療解禁」「株式会社病院」……すべて「モデル」は米国にある。国民の7人に1人が無保険者、病気になっても、とても気楽な気持ちでは医者にかかれない、そんな米国の民間保険型医療を本気で目指そうというのだろうか。(以下、市場原理の米国医療の実態が暴かれていました)