合併問題を総括する

 道志村との合併問題を振り返ってみると、残念ながらこの問題を通して「市民が主人公」になっていない市政の実体が表に出たような気がします。

村議会はなぜスジを通せたか
 「自治体の長と議会は車の両輪」「地方議会に与党も野党もない」と言われます。自治体の長(知事、市町村長)と議員は別の選挙で選ばれます。ですから議会は絶えず首長を批判・監督する責任があり、一定の緊張関係にあることが必要です。道志村の議会はその役割をきちんと果たしました。しかし、議長(2期目)を除く11人全員が昨年4月の選挙で当選したばかりの新人です。その議会が、なぜ村長の提案を否決できたのでしょうか。
 昨年7月、研修のあと、村議たちは当選以来の努力を語りました。「合併が何をもたらすかをつかまねば」の思いが伝わってきました。自分たちが決めなければならない村の将来、その責任の重さに衝(つ)き動かされたのでしょう。村民意向調査の結果は、この議会に力を与えました。村議会は地方自治の真髄をつかんだのではないでしょうか。合併の道を選ばなかった都留市と道志村に今後必要なのは郷土愛に裏打ちされた連帯だと思います。

自分の頭で考えない人たち
 合併促進派の人たちは「法定協で本格的な論議をしないまま白紙に戻ったのは残念」などといっています。なぜ、この人たちは「法定協でできあいの論議をするよりも多くのことを学んだ」人たちに敬意を払わないのでしょうか。ここには自分たちの主張こそが正しいという思い上がりがあります。世論の一部には「合併にこだわる理由は利権では」という見方さえあります。心すべきです。
 その後、多くの人から声をかけられました。「議会では合併反対が1人なのか。私のまわりに賛成する人はいないよ」。市民世論を問えば、合併推進派の人たちは、さらに大きな打撃を受けていたのではないでしょうか。

鳥取県知事、交付税を語る
 情報公開などで「改革派」といわれている鳥取県知事片山善博氏のホームページを覗いてみました。氏は東大法学部卒の官僚上がり、当然、私たちとは見解の違いもあります。
 氏は「三位一体改革論議の中で地方交付税が猛攻撃に晒(さら)されている。交付税のせいで地方団体にモラルハザードが生じ、それが地方歳出の膨張と交付税の肥大化を招いたというキャンペーンが繰り広げられている。でもそれは本当に正しいのだろうか」と疑問を呈し、地方自治体の財政困難を作り出した原因は政府が地方を公共事業に駆り立てたモラルハザードにこそあるときびしく批判しています。さらに「総務省は現在の地方財政危機の原因が自治体の規模が小さいせいだと強調して、市町村合併に躍起になっている」と批判しています。そして「彼らの情報だけでものごとを判断していては本質を見誤る」と警告を発しています。
 本質を見極める努力もしないで、国いいなりに合併を推進する人たちが語る「自治体の将来」論の底の浅さがよく分かります。


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