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「食べもの通信」から

アーサー・ビナードという人

 「食べもの通信」という定期誌があります。名前の通り、食べものを取り巻くいろいろな情報を掲載している雑誌です。

  食について考えさせる情報
 この雑誌を読んでいると、私たちのまわりにはガセネタに近い情報が沢山あることが分かります。たとえば災害に遭遇したとき、普段食べない乾パンを真っ先に食べるでしょうか。料理研究家は、乾パンを備蓄するのでなく「一般的な家庭なら、日常的に食べているものを繰り回ししながら、切らさず補充していくという備蓄方法(ランニングストック)ができれば、特別の備蓄庫はむしろ必要ありません」といいます。最新号は災害食の特集で、沢山の情報が載っています。また、高齢者に良質のたんぱく質が必要という立場から肉食を勧める論調がありますが、先々月号でこれについて特集し、疑問を投げかけました。さらにインスタント食品がうまいのはなぜかと問題提起し、画一化された「うまみ」が食文化を壊す危険性について警告したりしています。
 そして最新号に登場したのがアーサー・ビナードというアメリカ人です。

  日本の食と農を心配
 冒頭の紹介文の一部です。
 ー1967年アメリカ・ミシガン州生まれ。高校生のころから詩を書き、大学で英米文学を学ぶ。卒業と同時に来日。2001年第一詩集『釣り上げては』(思潮社)は中原中也賞に。その他、受賞多数。近著に『アメリカにも負けず』(新潮文庫)など。ー
 アメリカ人なのに日本語で詩やエッセイを発表し日本文化について深い理解を示しています。「『発酵文化』を基盤とする日本食への愛着は、みずからの名刺で『朝美納豆(あーさーびなーど)』と自称するほど」。
 と、ご存じない方への紹介ですが、実は母親大会で講演などして、わが家の大人で知らないのは私だけでした。
 そして語るテーマは「『食と農の崩壊』から始まる独立国としての危機から、私たちのこの国をどう守っていくべきか」。

  日本の何を守るのか
 紹介だけで終わりそうですので、結論部分に飛びます。重いテーマに厳しいことばで答えます。意外にも最後は日本語でした。
 …東京の街は立派に見えるけど、食糧自給率ゼロの餓死地帯です。それを「経済発展」と呼ばされているのです。
 ーその仕上げに、TPPが待っている。
 そうです。TPPはとどめで、二度と立ち直ることができません。今の日本政府は、本当は国賊集団、売国奴です。TPPに参加したら、100年後には日本語もなくなります。だって、グローバル経済の下では、先住民のことばは使いませんよ。ユニクロも楽天も「社内公用語は英語だ」とやっているでしょう。TPPに参加すれば、どの企業もいずれ英語に切り替えます。そうなれば、アイヌやチェロキー(アメリカ先住民の一部族)など各地の先住民の言葉が失われていったように、日本語も使われなくなりますよ。